社会そのほか速
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もともとアメリカの携帯では、メールではなくSMS(ショートメッセージサービス)の利用が一般的でした。相手の電話番号さえわかれば送れるという手軽さと、送った時に相手の携帯に表示されるリアルタイムさが受け、140文字という制限はあったものの多用されてきました。送られるメッセージは「テキスト」と呼ばれるのが普通です。
特にティーンでは主たるコミュニケーション手段がSMS。2007年に全国テキスト大会で優勝した13歳の少女が、毎月8000件のテキストを送ると語ってニュースになったこともありました。月のメッセージの数が1万件を超える子供たちもちらほらいるようです。毎日400件として、1日16時間起きているとすると、食事中も授業中も入浴中も含めて2~3分に1件の割合でテキストし続けている計算になります。恐ろしいことです。
実際に1日数百件のテキストを送るティーンの女の子に話を聞いたところ、目をつぶった状態でiPhoneのスクリーン上のキーボードをつかっても、電光石火のスピードでタイプミスのないメッセージが送れるとのこと。友達が少ない子もいるでしょうが、それでもティーン平均でテキスト送付量は1日60件もあるという調査結果が最近発表されました。
しかしSMSの問題は有料であること。1件当たり10~25セントするので、突然子供がSMSを多用し始め、知らない間に月間利用料が1000ドル(約10万円)を超したという話も以前何度か話題になりました。無制限にテキストが送れる料金体系もありますが、それも月20ドルほどします。また、海外とのテキストのやり取りは別料金になります。
そうした背景の中で登場したのが、世界中の誰にどれだけテキストを送っても無料のメッセージングアプリです。2009~2010年頃にはグループでメッセージのやりとりができるアプリが多数登場、2011年にはその一社のGroupMeがスカイプに買収され、Belugaはフェイスブックに買収されました。
そして、現在しのぎを削っているのはWhatsApp、Kikといったメッセージングアプリ。WhatsAppは月間利用者数がツイッターを凌駕(りょうが)する2億人超で、ノキアもWhatsAppにアクセスするボタンのついた端末を発売するほどの人気です。Kikは登録ユーザ数が5000万人を超したところで少なめですが、サードパーティがKik上で動くゲームを作れるプラットフォーム戦略で注目されています。他にも多数のアプリがありますが、さらにそこにアジア勢が進出。LINEに加え、中国発のWeChat、韓国発のKakaoTalkといったサービスも一角に食い込もうとしています。
変わったところでは「送った写真が10秒以内に消える」というSnapChatもあります。写真上にメッセージを書き込んで送付できるアプリで、スタンフォード大学の学生の授業内プロジェクトから始まりました。写真が来た、見た、消えた、というのが売りで、2011年9月のローンチから1年強でやりとりされた写真の合計が10億枚を超し、今では毎日1億枚の写真がSnapChat上を行き交う人気ぶりです。「すぐ消える」ということで、ティーンが性的に露骨な写真を送り合う「セクスティング」に使われているのでは、と恐れる人が多いのですが、700人のSnapChatユーザに対して行われたオンライン調査では、そうした写真を送ったことがあるのは13%だけで、後は友達同士でたわいない写真を送り合ったり、時には子供が親に今いる場所の写真を送ったりといった使われ方をしているようです。
それにしても、20年前に「将来、子供たちは話すより文章を書いてコミュニケーションをしたがる」と言ったら、きっと多くの人に笑われたことでしょう。「ありえない。ろくに字も書けないような子供が増えて行くばかり」と。しかし実際には、携帯は話すツールではなく文章を送るツールとしての使われ方が主流になりました。
さらには、SnapChatに見られる「マルチメディアでやり取りする」というのも新しいコミュニケーションの形です。「元気だよ」というかわりに「元気そうなポーズの自分」の写真を送る。そこには「元気そうなポーズ」というビジュアルなアイデアが必要です。そしてそれを恒常的に、1時間に何度も考えては写真を撮って送る。脳が柔軟な間に、こうしたビジュアルコミュニケーションの訓練を積んだ現代の子供たちが将来どのような思考力を持つのか、興味深いことです。
前日の感謝祭の日に親戚一同が会して腹十八分目くらい七面鳥を食べ、いったん昏倒するように仮眠した後、ムクリと起き上がっておもむろにクリスマス用のショッピングに出かける。それがアメリカの古き良き習慣です。
感謝祭は11月の第4木曜日なので、翌日は必ず金曜日。この日、人々が狂乱の買い物をすることで、小売業は1月からの累積赤字を一掃して「黒」に転じるとされ、それがブラックフライデーの名前の由来です。ブラックフライデーには多くの小売業が夜中の0時から朝6時くらいまでの間に開店、お買い得品を狙う人々が冬の真夜中に列をなすという異様な光景が全米で展開します。時には開店と同時になだれ込んだ客に踏みつぶされたり、乱闘が起こったり、そのまま暴動になったりで死人が出ることもあります。恐ろしいことです。
そんなリアル店舗を避け、オンラインで買い物をする人もたくさんいます。調査会社のコムスコアによれば、今年の感謝祭とブラックフライデーのオンラインショップ総売り上げは、昨年に比べて17.3%増加したとのこと。オンライン小売業にとっては大変幸先の良いショッピングシーズンのスタートとなりました。
そんなオンラインショップの1つがZulily(ズーリリー)。2009年に始まった、小さな子供を持つ母親をターゲットとしたフラッシュセールサイトです。フラッシュセールは、毎日違う商品が登場して入れ替わっていく仕組み。Zulilyでは毎日新たな店舗が登場し、3日間の限定セールを開催します。サイトをチェックしてみると、12月1日に始まるセールは洋服が41店舗、インテリア関係が14店舗、計55店舗でした。それぞれが数十点の商品を提供するので、毎日1000を超す新しい商品が登場することになります。店舗の中には誰でもが知るブランドもありますが、多くは独自性のあるニッチな小規模メーカーで毎日見飽きません。結果、ついつい病み付きになり、次から次へと買い物してしまうように設計されています。
Zulilyのすごいところは起業から上場までがたったの4年だったこと。1999年のドットコムバブルの頃は「4年で上場」がスタンダードでした。ところがその後、上場基準が厳しくなったこともあり、起業から上場までには長い時間がかかることが多くなりました。優等生のベンチャーでも同様で、Googleで6年、Facebookで8年、Twitterで7年かかっています。
Zulilyの創業者はシリアルアントレプレナーで、Zulilyの前はBlue Nileという婚約指輪のオンラインサイトを上場させた経験があります。今ではアメリカの婚約指輪の20個に1個がBlue Nileで購入されているとされる成功サイトで、この経験を基に一気にZulilyを拡大、4年の間に1億3900万ドル(約140億円)を調達し、サクサクと上場にこぎ着けました。上場後の株価も順調に推移しています。
ちなみに、Zulilyの創業者のマークは私の大学院時代のクラスメート。おとなしそうな風貌、物腰に加え、大学院時代はパートタイムで働いていたこともあって最低限の授業にだけ登場。ネットワーキングもほとんどしなかったので同級生でも彼を知らない人も多いのではないかと思います。そんなマークがまさかこんな起業家精神にあふれていたとは。いやいや、人間というのはわからないものでございます。
Vineは、元々ニューヨークの3人の若者が去年の6月に創業したベンチャーで、まだ製品もリリースされていなかった10月にツイッター社が買収しました。
これまでツイッターやフェイスブック上でのユーザー間のシェア(共有)の対象としては写真の方が非常に人気で、動画はなかなか大きくブレークしませんでした。このコラムの「鳴り物入りで終わったColor」(2012年11月21日掲載)で昨年紹介したColor社もフェイスブック上での動画シェアにトライしましたが、30億円以上を調達したのにもかかわらず姿を消してしまいました。
Vineの特徴は動画の制限時間が6秒なこと。ユーザはVineのモバイルアプリを立ち上げて録画してアップロード。できあがった動画はVineのアプリ上でも一般のブラウザーでも見ることができ、再生時には6秒の動画がループされ無限に繰り返します。
「6秒で何ができるのか」と思うかもしれませんが、これが意外に楽しめます。特に「ループになる」というのがミソで、たった6秒でもかなりの満足感があります。また、6秒をさらに分割して2秒のクリップを3個つなげてストーリー性を持たせたり、1秒を6個つなげてアートな雰囲気にしたり――といろいろなトライがされており、企業や映像アーティスト、ミュージシャン、俳優、コメディアンといったプロによる作品も多数あります。そうした中から特に人気のあるものを選んでつなげたVineベスト集的な動画がインターネット上のあちこちにあり、ついつい時を忘れて見入ってしまいます。
さて、数秒の動画のループは、実はこれまでも密(ひそ)かに人気がありました。インターネットアクセスのあるアメリカ人の6パーセントが見ている掲示板サイトRedditにもgifsというカテゴリーがあり、毎日多数の動画へのリンクが掲載されています(gifはそうした動画のフォーマット名です)。その中には面白いものもあれば、衝撃的なものもあります。多くの場合たったの数秒にエッセンスが凝縮されています。
考えてみると、どんなに長い動画でも、見どころはたったの数秒であることが多いものです。ペットのかわいらしいしぐさにしろ、列車事故にしろ、見たい「何か」が起こるのは一瞬。gif動画はそうした「何か」だけをループにすることで、短時間でたくさんの情報にアクセスしたいインターネットの先進ユーザーの心をつかんできました。そんなgif動画のアンダーグラウンド的な面白さを一般ユーザーでも楽しめるようにしたのがVineなのです。
よくも悪くも、人間が一つのことにフォーカスできる時間は年々短くなってきています。昔は「モノを読む」と言えば本を一冊読むことだったのが、ウェブサイトの1ページをあちこちつまみ食いするのが主流になり、さらにはツイッターの140文字を流し読みするようになりました。Vineは、こうした「関心を維持できる時間の短縮傾向」を動画に反映させたサービスと言えるでしょう。
なお、Vine、ユーザー登録せずに動画を眺めるだけでも楽しめますので、興味のある方はスマートフォンにダウンロードしてみてください。
去年の10月にビットコインについて書いた(―夜も眠れぬ「サトシ」の話―参照)後、ビットコイン業界は「事実は小説より奇なり」というくらいの大変動に見舞われています。
9月時点で1ビットコイン1万円ほどだったのが、12月には12万円超に。1月には、数々の大規模な起業や投資を成功させてきたトラックレコードを持ち、シリコンバレーの王族とも呼ばれるマーク・アンドリーセンが「なぜビットコインは重要なのか」という記事をニューヨーク・タイムズ紙に寄稿して話題に。そのたった2週間後に、日本のビットコイン取引所Mt.Goxがビットコインの引き出し停止を発表、日米で倒産手続き開始。
3月6日には、ニューズウィーク誌が、ビットコインの考案者は64歳の日系アメリカ人サトシ・ナカモトだと発表。これまで仮名だと信じられて来たものが実は本名で「サトシ・ナカモトの正体はサトシ・ナカモトだった」という
テレビドラマですら、もう少し伏線がありそうなものです。
さて、Mt.Goxが倒産して「だからビットコインなどダメだ」と思っている方も多いかと思いますが、残念ながらそう思っていない人がたくさん世界にはいるようです。なぜそれが「残念」かというと、実は私、
「ふふふ、これでビットコインも格安になるはず。そうしたら買っておこう」
と
Mt.Gox取引停止時点の相場は、1ビットコインが8万円(800ドル)台でした。
「もしかして1万円を切るのでは」
と思って待っていたのですが、いったん5万円台まで下がったものの、そこからまた回復して6万円台で推移しており、1万円を切る日はなかなか来そうにありません。
さらには、ニューヨーク州金融サービス局が、ビットコイン取引所の開設申請を正式に受け付けることを3月11日に発表、とりあえず「Mt.Gox事件」は無かったかのようにビットコイン業界は進んでいます。
「そうか、あれだけの事件があってもビットコインを買い支える人がたくさんいるなら買っておこう」
そう思う勇気ある方もいると思いますが、Mt.Goxなきあと、日本にいながらにしてビットコインを買うのはそれほど簡単ではありません。そんな中、朗報はRobocoinというラスベガスにあるベンチャーの「ビットコインATM」。「3月11日に日本に向けて出荷する」と製造元が発表しており、どうも日本のどこかに、円で入れたらビットコインが買えるATMが登場するようです。
しかしながら「買ったビットコインをどうやって持つべきか」という悩みは残ります。Mt.Goxのような取引所に預けておく、というのが1つの方法ですが、つぶれた取引所はMt.Goxが最初ではありません。
ちなみにビットコインを持つ、というのはどういうことかというと、「プライベートキー」という数字と文字の列を持つこと。自分のハードディスクに保存するのも手ですが、ハッカーに盗まれてしまうかもしれません。代わりに「ペーパー・ウォレット(紙財布)」という方法もあります。これは、プライベートキーをプリントアウトして紙として保存すること。
それすら心配な人には「ブレイン・ウォレット(脳内財布)」という方法もあります。これは、複雑な文章を基にプライベートキーを生成、その大元の文章を暗記しておくというもの。しかしながら、幼少のみぎりから物忘れが激しい私にとっては、どのウォレットも恐怖でしかありません。ハードディスクなどいつ上書きしてしまうやら、紙なんてうっかり捨てる可能性99%、3桁の数字すら覚えられないのに複雑な文章など覚えられるはずなどなく。
なかなかハードルの高いビットコインなのであります。
FiftyThree(フィフティスリー)というベンチャーがあります。
作っている製品は、iPadアプリの「Paper」と、それと連携する「Pencil」というデバイス。2012年の4月に10万ドル(約1000万円)の資金を集めてニューヨークで創設され、2013年6月には著名ベンチャーキャピタルであるAndreessen Horowitzを筆頭とする複数の投資家から1500万ドル(約15億円)を調達して話題となりました。
Paperは無料でダウンロードできるアプリで、アプリ内にあるノートや複数のペン先や色を使って絵が描けるようになっています。さらに有料で色やペンを追加して描画の幅を広げられるという、「最初無料、その後有料」なフリーミアムモデルのアプリです。加えてFiftyThreeのサイトで「Pencil」を注文すると、鉛筆によく似たデバイスが郵送で送られてきます。こちらはブルートゥースでワイヤレスにiPadとつながり、Paper上で、通常の鉛筆同様に尖(とが)った側で描画をし、反対側で描いたものを消せるようになっています。さらに、Pencilを持った手のひらが画面についても描画されない、指で画面をこすると画面上の色を混ぜることができる、といった機能もついています。
PencilもPaperもよくできており、これを使うと誰でも実力以上に芸術的な絵を描くことができるようになるという、なかなか素晴らしい製品です。とはいえ、これだけではただの「素敵なお絵描きツール」でしかありません。この「お絵描きツール」が創業1年で1500万ドルも調達したのはなぜかといえば、FiftyThreeが「タブレット上でのクリエイティビティ・ツールを制覇する」という野望を持っているからなのでした。
PCでのクリエイティビティ・ツールといえばAdobe(アドビ)社の牙城。それほどITに関心が無い方でも、FlashやPDFのダウンロードを促すメッセージ画面を見たことはあるのではないかと思います。Adobeは、こうしたビューワー(表示)アプリをユーザに無料で配布、その裏側でクリエイターが画像やアニメーションを作るために利用するソフトウェアを販売して利益を上げており、1万人以上の社員を抱え、年間4000億円超を売り上げる大企業です。
スティーブ・ジョブズは、今後コンピューティングの主力はPCからタブレットに代わると予想しましたが、その変化の後、PCでAdobeが果たした役割をタブレットで果たす候補としてFiftyThreeが高く評価されているのです。
ま、しかし、野望はさておき、高額投資をするのは、実際にタブレットにクリエイティブの主戦場が置き換わり、さらにそこでのツールを開発したベンチャーが登場してからでもいいのではないか、という気もします。そういう意味では、「風が吹けば桶(おけ)屋が儲(もう)かる」的に先を見越した「高い評価」なのですが、ベンチャー市場がヒートアップする昨今、これくらい早い時期に見極めないと、なかなか投資家もやっていけないということなのでしょう。