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FiftyThree(フィフティスリー)というベンチャーがあります。
作っている製品は、iPadアプリの「Paper」と、それと連携する「Pencil」というデバイス。2012年の4月に10万ドル(約1000万円)の資金を集めてニューヨークで創設され、2013年6月には著名ベンチャーキャピタルであるAndreessen Horowitzを筆頭とする複数の投資家から1500万ドル(約15億円)を調達して話題となりました。
Paperは無料でダウンロードできるアプリで、アプリ内にあるノートや複数のペン先や色を使って絵が描けるようになっています。さらに有料で色やペンを追加して描画の幅を広げられるという、「最初無料、その後有料」なフリーミアムモデルのアプリです。加えてFiftyThreeのサイトで「Pencil」を注文すると、鉛筆によく似たデバイスが郵送で送られてきます。こちらはブルートゥースでワイヤレスにiPadとつながり、Paper上で、通常の鉛筆同様に尖(とが)った側で描画をし、反対側で描いたものを消せるようになっています。さらに、Pencilを持った手のひらが画面についても描画されない、指で画面をこすると画面上の色を混ぜることができる、といった機能もついています。
PencilもPaperもよくできており、これを使うと誰でも実力以上に芸術的な絵を描くことができるようになるという、なかなか素晴らしい製品です。とはいえ、これだけではただの「素敵なお絵描きツール」でしかありません。この「お絵描きツール」が創業1年で1500万ドルも調達したのはなぜかといえば、FiftyThreeが「タブレット上でのクリエイティビティ・ツールを制覇する」という野望を持っているからなのでした。
PCでのクリエイティビティ・ツールといえばAdobe(アドビ)社の牙城。それほどITに関心が無い方でも、FlashやPDFのダウンロードを促すメッセージ画面を見たことはあるのではないかと思います。Adobeは、こうしたビューワー(表示)アプリをユーザに無料で配布、その裏側でクリエイターが画像やアニメーションを作るために利用するソフトウェアを販売して利益を上げており、1万人以上の社員を抱え、年間4000億円超を売り上げる大企業です。
スティーブ・ジョブズは、今後コンピューティングの主力はPCからタブレットに代わると予想しましたが、その変化の後、PCでAdobeが果たした役割をタブレットで果たす候補としてFiftyThreeが高く評価されているのです。
ま、しかし、野望はさておき、高額投資をするのは、実際にタブレットにクリエイティブの主戦場が置き換わり、さらにそこでのツールを開発したベンチャーが登場してからでもいいのではないか、という気もします。そういう意味では、「風が吹けば桶(おけ)屋が儲(もう)かる」的に先を見越した「高い評価」なのですが、ベンチャー市場がヒートアップする昨今、これくらい早い時期に見極めないと、なかなか投資家もやっていけないということなのでしょう。