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モチモチの食感とツルっとした喉越しの麺に、濃厚なつゆの上でひらひらと踊る花がつお――。400年の歴史を持つとされ、最古参の「なごやめし」として愛されてきたきしめんが、近ごろは人気がいまひとつという。地元愛知県では「きしめん離れ」の進行を食い止めようと、製麺業者らが発祥地のプライドをかけてPRに奔走。県も新種の小麦を開発してバックアップに乗り出した。「地味だけど、いっぺん食べてみて」。官民一体の地道な努力が、少しずつ実を結んでいるようだ。
「金鯱カレーきしめん」
10月中旬、名古屋・栄の久屋大通公園で開かれた「名古屋まつり」。手羽先や味噌カツに混じり、名古屋城天守閣のシャチホコに見立てた2本のエビフライがそびえ立つ「金鯱きしめん」が好評を博していた。
カレーをからめたタイプも売り出され、愛知県春日井市の女性会社員(25)は「普通のきしめんもいいけど、これはこれで面白い」と満足げ。幼い頃から家族できしめん店に足を運んできたといい、「最近は専門店が減って寂しい。どんどん盛り上げてほしい」と声援を送っていた。
出店したのは、製麺業者などでつくる「愛知県きしめん普及委員会」。委員長の加古守さん(71)は「きしめんの良さを売り込むには、こういう『変わり種』も必要」と強調する。
ここまで手を替え品を替えて取り組むのは、きしめんの消費量の減少がある。委員会が設立された2008年ごろ、加古さんが経営するきしめん店では、うどんに押され、きしめんの注文は1割程度だったという。
農林水産省などによると、きしめんを含む「ひらめん」の生産量は、1981年には小麦粉換算で約1万5千トンだったが、2009年には14%程度の約2200トンまで落ち込んだ。食習慣の変化で、パスタやラーメンなど他の麺類を好んで食べる人が増えたことが背景にあるとみられる。
普及委員会は11年から、名古屋市の小学校に年間4回ほど出張し、きしめんの作り方を伝授。「現場で尋ねると、自宅できしめんを食べたことがある子どもは2割程度」(加古さん)と厳しい状況だが、一口食べてとりこになり、6杯もおかわりする児童もいたという。
名古屋市も、12年度から市内の小学校の給食できしめんのソフト麺の提供をスタートさせた。献立に並ぶのは年1回。市教育委員会は「なごやめしをメニューに取り入れることで、地元の食材に親しんでもらいたい」としている。
こうした草の根の活動を後押しするように、行政も支援に乗り出した。愛知県農業総合試験場は、約10年の歳月をかけてきしめん・うどん向けの小麦「きぬあかり」を開発。コシがあり、つるつるとした食感が特徴で、12年から本格生産が始まった。
同年に約145ヘクタールだった作付面積は、14年には約1800ヘクタールに拡大。県園芸農産課の担当者は「県産小麦の主力品種に位置づけ、今後も生産を拡大していきたい」と話している。