社会そのほか速
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児童8人が亡くなった13年前の大阪教育大付属池田小事件をきっかけに、学校の安全に関する取り組みが広がる。
「起きたことを包み隠さず説明してほしい。遺族は全てを知りたいのです」。11月上旬、文部科学省で開かれた有識者会議。事件で同小2年生だった長女の麻希さん(当時7歳)を失った酒井智恵さん(53)が訴えた。会議は、教育現場で事件事故や災害が起きた際の対応を考えるために今春設置され、大学教授や学校長ら11人でつくる。酒井さんもその一人だ。
事件直後、同小から納得できる説明はないまま、「最善は尽くした」と言われ、不信感を抱いた。「麻希の最期、そして事件の全てを知りたい」。その一心で、翌月から約3か月間、教員と遺族でほぼ毎週末に集まり、事実を確認していった。娘を襲った事件の細部を知るのはつらい時間でもあった。だがやがて、不十分な管理体制や、通報の遅れ、避難誘導の混乱など、課題が浮かび上がった。
この経験から酒井さんは、事件後の早い段階で学校と遺族が事実に対峙(たいじ)することが再発防止に必要だと思うようになった。「遺族と学校が共に事実を明らかにできる仕組みを国に整備してもらいたい」。夫の肇さん(52)と話し合って会議への参加を決めた。同省は会議の結果を踏まえ、来年度に事件への対応のあり方などをまとめ、全国の教育現場に周知する。
事件の防止策も進む。付属池田小では2004年に校舎を改築、子どもが押せる警報ブザー約320基を設置した。09年度には独自の授業「安全科」を始め、全学年が週1回、不審者から身を守る技術などを学ぶ。通学路や周辺の公園などで危ない場所を見つけ、自ら危険を判断し、回避する能力を育てる。
取り組みは全国で参考にされ、通学路などの安全対策を導入する自治体もある。背景には、子どもが犠牲になる事件が後を絶たない現状がある。警察庁によると13歳未満の子どもが連れ去られた事件は13年で94件。08年の63件から増加傾向だ。今年9月には神戸市で小学1年の女児が下校後に行方不明になり、殺害される事件があった。
大阪教育大の藤田大輔教授(安全教育学)は「自分のことを守れるように子どもの主体性を育てるとともに、学校と地域が課題を共有し、社会全体で安全を図る意識が必要だ」と語った。(神谷次郎)
2001年6月、大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)に男が押し入り、児童8人が刺殺され、教員2人を含む15人が重軽傷を負った事件は、学校の安全論議の原点となった。「教育ルネサンス」では、「守る 学校の安全」(05年4~5月)、「学校の安全」(11年6月)で、同小などの安全対策を取り上げた。