社会そのほか速
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
2000年に開学した立命館アジア太平洋大学(APU、大分県別府市)。学生の半数近くを外国人留学生が占め、グローバルなキャンパスが実現したが、卒業生の就職では悩みもある。
昨年11月中旬、同大であった「キャリア日本語1」の授業。留学生24人が六つの班を作り、企業の採用試験を想定した面接の練習に取り組んだ。
「長く話さず、要点を的確に」「話題を広げるには、日頃から新聞を読み、ニュースを見ていないと」。日本語で自己PRをする学生に、梅田千砂子准教授(62)が次々とアドバイスした。
「日本語の力を磨くほか、日本社会や文化についても理解を深めさせたい」と梅田准教授。韓国出身で国際経営学部3年の呉健茂さん(23)は「なぜ日本の企業で働きたいのかと問われるので、思考力も鍛えられる」。日本企業に就職し、発展途上国の経済に貢献するのが夢だ。
同大では授業の9割が日本語だけでなく英語でも行われ、日本語に堪能でない留学生でも学びやすい。昨年11月現在、学生約5800人のうち半数近い約2700人が留学生で、出身国・地域は75に上る。
毎年、卒業する留学生の3分の1の約200人が日本企業や外資系企業の日本法人に就職するが、離職したり、転職を繰り返したりする例もある。社内で下積みをしながらキャリアアップする日本企業の考え方に合わないためだ。企業トップがグローバル化を掲げても、社員に行き渡っていないことも多い。
2期生でウズベキスタン出身のズルフィヤ・シャフィエバさん(31)は、東京などの3社で働いた。一つのことを決断する際、ほとんど関係ない部署の承認を必要とする社内プロセスに疑問を持った。「学んだことや人脈を日本で生かしたい」と、一昨年3月にウェブ制作などを手がける会社を東京で起こした。
今村正治副学長は「留学生が日本社会に根づくことで、相互理解が少しずつ進む」と期待する。同大は今年、文部科学省が重点的に支援する「スーパーグローバル大学」の一つに選ばれた。今後は100か国・地域の留学生が学ぶキャンパスにし、教育、研究の質を世界レベルに引き上げる。多くの卒業生が社会で活躍する頃には、キャンパス外でもグローバル化が実現するかもしれない。
法務省入国管理局の統計によると、2013年に日本企業等への就職を目的に在留資格の変更を許可された外国人留学生は1万1647人で、01年の約3倍。「教育ルネサンス」では「変化の最前線」(2005年1月)や「世界と大学」(2012年12月)などで、立命館アジア太平洋大を取り上げた。(保井隆之)
※連載2000回を機に現場を再訪したシリーズは、今回で終わります。