社会そのほか速
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国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位推計)によると、2060年の日本の人口はおよそ8674万人となる。この推計のスタート地点である2010年の国勢調査時から見ると、人口は3割以上も減少してしまう。「へ〜そうなんだ」と人ごとのように思われているかもしれないが、たかだか半世紀後だ。
今の25歳は2060年には70歳に、35歳は80歳になる。いわゆる「中年」と呼ばれる世代ですら、まだ多くが生存しているであろう「近未来」のことなのである。
ところが明治時代、「三百年」くらい先を考えてしまう人がいた。月露行客(げつろ・こうかく)がそうだ。そして、『三百年後の東京』(1903年)という本を書いた。今でいうところのSF小説である。1902年(明治35年)に冷凍睡眠庫に入った人間が、300年後に蘇生して、未来社会に登場するといった奇想天外な設定だ。人類は未来予測が好きなのだ。未知への憧れが想像の翼を開かせるのだろう。要するに「妄想」だ。
だが、荒唐無稽に思われた妄想が、後に少なからず実現する。20世紀初頭(1900年)に100年後の世界、つまり、20世紀末を予測した新聞記事も明治時代に登場している。「二十世紀の豫言」と題した報知新聞(当時はスポーツ紙ではなく一般紙)の記事がそれである。
内容は以下のようなものだ。
・100年後(20世紀末)には、電話が普及し世界諸国に連絡ができるようになる。遠距離で撮られた写真を編集部は、瞬時に手に入れられる。
・電話口には相手の写真が映し出されるようになる
・遠距離にある品物を「写真電話」で見つくろい、直ちに注文できるようになる。
他にもあるが、そのほとんどが実現している。実に100年前の予測が、である。
さて、「冷凍睡眠」に話を戻そう。100年以上を経た今日、どうなっているだろうか。この考えは、今も人類の夢の中で生育しつつある。例えば、火星への有人飛行を目指すNASA(米航空宇宙局)の助成を受け、米スペースワークス社がそれに似た技術の研究を進めているそうである。火星に近づくまでの半年間、宇宙飛行士を人工的な冬眠状態に置き、代謝を低下させることによって火星への旅の過酷さから解放する。同時に、飛行のコストも大幅に節減できる可能性もあるのだ。
今や、医療技術は遺伝子や脳内、あるいは生命の誕生という領域にまで大きく足を踏み入れている。“300年間の冬眠”は現時点で不可能であるが、そんなに遠くない日に、可能になるかもしれない。
(ライター・佐野泰人)