社会そのほか速
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より細密に、より深く──。最先端を行く紙媒体とは、どんな内容なのだろうか。知られざる専門誌の世界を紹介。今回は“住職”の専門誌だ。
『月刊住職』
創刊:1974年
月刊誌:毎月1日配送
部数:全国6万か寺の約4分の1(約1万5000部)
読者層:全国の伝統仏教寺院の住職
定価:1404円
購入方法:発売元・興山舎に直接注文。
〈庫裡(くり)改築の寄付金も檀家の財産も奪って失踪した住職の行方〉
〈住職逮捕で世間に知れ渡った寺檀紛争に和解の道はあるのか〉
思わず目を疑うような、住職が起こす事件の数々を、週刊誌顔負けの取材力で記事にしている『月刊住職』。
ちなみに冒頭の記事は、〈60才にもなる浄土真宗本願寺派の住職がお寺に妻を残したまま行方不明になった。のみならず檀家から集めた建築寄付金7000万円、さらには90才を超す檀家の財産1億円以上も奪って失踪している〉と事件を伝えている。それにしても、業界誌が身内の起こした不祥事に対して、なぜこれほど攻めた記事を組むのか。
自身も住職である矢澤澄道編集長(65才)は、「争い事には、寺院の意味や時代の風が端的に出るんですよ」と、こちらの驚きをよそに淡々と答える。
「多くの住職は事件や訴訟事と無縁で日々を過ごしています。が、万が一ぶち当たったら、檀信徒はどう対応するのか。自身はどうするのか。そうした時に情報を共有しましょうというのが本誌の趣旨です」
そう語る矢澤さんは、寺院の長男に生まれ、大学を出て僧侶になったものの、実家を継いで住職になる決心がつかず、デパートの業界誌に就職。
27才のとき、『月刊住職』の編集長に雇われ、順調に部数を伸ばした。が、25年目に当時の社長が事業を拡大して失敗。倒産した。
「編集業務はすべて終わっていて、あとは印刷会社がスイッチを押すだけという段階で、印刷代が払えないことが発覚。どうしても発行できませんでした」
その後、債権者とのヒリヒリするような応酬も経験した。
「私自身は、住職の収入に税金が課せられたり、住職に選挙権があることもどうかと思っています。でも現実は、社会のつくった器の中で寺院は生きていくしかありません。だから地域のリーダーとして檀信徒を守るべき住職は、仏法と世間法の両方を知る必要があると思うのです」(矢澤さん)
同誌ではすぐに役立つ身近な問題も多く採り上げている。
2月号では、〈檀家総代選びの失敗から学ぶ 必ず成功する総代人事の仕方〉と題し、全国の10人の住職から現場の声を集めた。…