社会そのほか速
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熊本県と天草地域2市1町などが出資する第三セクター「天草エアライン」(天草市)が、23日に就航15周年を迎える。保有機はわずか1機(39人乗り)ながら、2009年度から5年連続で単年度黒字を続け、最近は全国放送のテレビ番組で「奇跡」などと相次いで取り上げられるほどの勢いだ。ただ現実は、行政側の補助金が経営を支えている面もあり、社員たちは「少しでも収益を」と奮闘を続ける。「日本一小さな航空会社」の営業の舞台裏を探った。
□現場が前向きに
同社は、熊本県が00年に天草空港を開設したのを機に、福岡、熊本便を就航させた。当初は県OBらが社長を務め、ビジネス客や住民の利用で経営は順調だったが、やがて搭乗率は徐々に低迷し、赤字決算が続いた。
09年に日本航空(JAL)出身の奥島透氏が社長に就任したのが転機となった。民間からのトップ就任は2人目。「自分たちで何ができるか考えよう」と、社員たちにハッパを掛け続けた。「現場に創意工夫する空気が生まれた」。川崎茂雄営業部長は振り返る。
客室乗務員たちは手づくりの機内誌を作成。乗客との記念撮影に気軽に応じ、アナウンスも型通りでなく当意即妙に話し、「気さくな雰囲気」と評判を呼びリピーターが増えた。奥島氏は整備スタッフにも「安全第一。妥協するな」と高いレベルを要求し、士気を高めた。公募デザインで機体はかわいい親子イルカのペインティングに変更し、女性や子どもの人気を呼んだ。
□行政支援で達成
行政だけでなく地域も一肌脱ぎ、「天草の空サポータークラブ」をつくってファンを囲い込む支援策が始まった。こうした努力が奏功し、13年度は旅客数が前年度比14・5%増の7万6387人となり、売上高は7億3277万円で2年連続の増収決算となった。純利益も1288万円で、5年連続黒字となった。
それでも川崎部長は気を引き締める。「黒字は県や2市1町の補助金(13年度は計3億1400万円)があってこそ達成できた」。奥島氏から昨年6月バトンタッチした吉村孝司社長も就任会見で、「収入を拡大し、行政の負担を軽減したい」と力を込めた。
□機体更新が難題
同社は就航以来、「1日全便、全席満席」の達成がない。そこで悲願をかなえようと8日、「1日全便搭乗率100%祭」と銘打ったキャンペーンに挑んだ。しかし全席予約で埋まったものの、この日になってキャンセルが出て達成はならなかった。
一方、4月からは、各便の座席の一部をJALが販売する「コードシェア」も始め、搭乗率向上を狙う。
攻めの姿勢を崩さないのは、1機しかない機体の更新という難題が控えているという事情もある。
仏製プロペラ機(48人乗り)の購入費約21億円は2市1町で負担するが、来年1月の就航前に5カ月間にわたってパイロット8人を訓練に充てる必要があり、その間は定期便が大幅に減便せざるを得ない。
利用客をどうつなぎ留めるか。「営業努力は終わりがない」。川崎部長をはじめ、社員の試練は続く。
◆天草エアライン・・・1998年10月設立。運航開始は2000年3月。資本金4億9900万円。役員・社員58人。現在は天草-福岡3往復、天草-熊本1往復、熊本-伊丹1往復の計10便を毎日運航。