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もしも自分が難病を背負っていたら、生まれてくる子どもに同じ思いをさせたいという人はいないだろう。だからこそ、親になるのをためらう人がいる――。
今、そんな哀しい運命とサヨナラできる驚異の医療技術がイギリスで始まった。親の重い遺伝性疾患が子どもに伝わるのを防ぎ、完全な健康体のベビーを生むことを可能にする、まさに夢のような誕生物語だ。
【その他の画像はこちら→http://tocana.jp/2015/04/post_6171.html】
■遺伝的欠陥の可能性をDNAレベルで排除
英紙「Telegraph」によると、イギリスに住むカルメンさん(26歳)は、自身の妊娠を知った時、非常に不安を感じたという。なぜなら、彼女は父から珍しい型の筋ジストロフィーで下肢遠位部の筋力低下、感覚障害を引き起こす難病「シャルコー・マリー・トゥース病」を遺伝しているからだ。幸いにも、カルメンさんは軽度の症状で済んでいるが、もし出産する場合、子どもに遺伝する可能性は50%だと専門医から警告されていた。
「遺伝の確率が高すぎます。私の父は50代で亡くなりましたが、介添えなしでは歩けないほど重病でした」
とカルメンさんは振り返る。
カルメンさんと夫のガブリエルさん(30歳)は途方に暮れた。しかし、ロンドンの不妊治療医が全く新しいタイプの着床前遺伝子診断を導入していることを探り当てると、「選択肢はほかにない」と直感に従ったのだ。
診断にはまず、カルメンさん、彼女の母親、そしてガブリエルさんのDNAサンプル採集を必要とした。遺伝子コードの、どの部分が変異の原因になっているか突き止めるため、染色体の30万ヵ所で遺伝子配列の比較を行うのだ。
「その後、体外で培養した胚で両親から受け継いだ遺伝的欠陥の有無をチェックし、正しい数の染色体を持つ健康な胚だけを選りすぐり、子宮に移植するのです」。そう話すのは「遺伝子・再生医療センター」の創設者ポール・シャール医師で、新技術「karyomapping」の生みの親だ。
こうして、遺伝的疾患のリスクを取り除き、生まれてきたのが息子のルーカス君だ。今月、無事生後4カ月を迎えようとしている。
■進化する「デザイナーベビー」技術
「息子は健康そのものです。最初は心配でしかたなかったんですが、月齢の割に大きいですし、今は私も安心しています」とカルメンさんは喜びを噛みしめている。ルーカス君はシャルコー・マリー・トゥース病だけでなく、他の染色体異常の病気からも完全に解放されたのだ。…