社会そのほか速
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
吉井和哉には聴き手に対する細やかなマナーを感じます。自分の音域を把握して十分に響くスペースの中で曲に迫力を持たせられる。喉ではなく腹の歌なのです。太く丸みを帯びた声が、聴き手をリラックスさせてくれます。
だけどサウンドは紛れもなくロック。耳の理性を落ち着かせつつ、心をたかぶらせる。刺激的でありながら、情緒が暴れて音楽を壊す恐れがない。絶妙なバランスはザ・イエロー・モンキー時代から変わらぬ美徳だと言えるでしょう。
3月18日にリリースされた新作『STARLIGHT』では、その安心感がさらに深みを増しています。全10曲40分余りですが、聴きごたえは十分。繰り返しのリスニングに耐えられる基礎を感じる一枚です。
それを支えるのが幅の大きなメロディ。そこに語のもつ強弱とアクセントが自然な形で反映されている。音を聴きながら歌詞カードを目で追っても、違和感がほとんどありません。
のみならず本作では詩そのものの切れ味も鋭い。抽象的なイメージや独り言がほとんどの「You Can Believe」という曲では、たった一度ロケーションを限定して意味を作り上げてしまいます。
<真っ青な8月の空と太陽の下で ラフォーレ前は天然色になる>
急にカメラがパンするような効果を生むフレーズですが、理由が説明されることはありません。この場景を抜き取る価値観の中にメッセージがあるのかもしれない。しかしどう読むかは聴き手にゆだねられているのです。
またこれがイエローモンキー時代のヒット曲「LOVE LOVE SHOW」を思わせる曲調であることも味わい深い。ソングライターとしての着実な歩みがよく分かる仕上がりになっているからです。
◆引用の仕方が小手先でなくおおらか
そして作詞家としてスケールアップした余裕が、曲にもよい影響を与えているように思います。引用の仕方が小手先でなくおおらかなのです。たとえば先行シングルの「クリア」ではボ・ディドリーと種明かしをしながら、コーラスの絡み方にはブラーの「Tender」っぽいフィーリングもある。
⇒【YouTube】吉井和哉 クリア【Short ver.】 http://youtu.be/EM_MDeqCy8w
⇒【YouTube】Blur – Tender http://youtu.be/SaHrqKKFnSA
「(Everybody is) Like a Starlight」には奥田民生の「花になる」のメロディが紛れ込んでいて、「Stronger」は大胆にもジョン・レノンの「Mother」のような符割とサウンド。…