社会そのほか速
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「このような転職の流れが生まれるとは思ってもいなかった」
金融業界の転職事情に詳しいヘッドハンターはそう明かした。今、証券業界の人材をめぐってある異変が起きている。
三菱東京UFJ銀行(BTMU)が個人向け部門の「総合職」の中途採用を強化しているのだ。
草刈り場となりそうなのが、厳しいノルマで知られる大手証券の20代後半~30代前半に当たる営業担当者である。規模にして20~30人ほどを採用するとみられる。
かつてほどではないとはいえ、大手銀行の総合職といえば、今でも有名大卒エリートの人気就職先だ。「証券の営業マンを受け入れることはまれで、過去にも採用自体はあったが、ここまでの規模は聞いたことがない」(前出のヘッドハンター)という。
しかも、これはBTMUに限った話ではない。他の大手銀行もヘッドハンターらに依頼して、同様に証券会社の営業マンの中途採用を積極化している。転職市場の水面下に大きなうねりが起きているといっていいだろう。
氷河期世代を確保
背景には、銀行側の事情がある。国内では低金利の時代が長く続き、銀行のビジネスモデルは本業の融資ではもうけづらい構造に陥っている。そこで個人向けに強化してきたのが投資信託などの販売だ。リスクのある商品を販売した手数料収入で、本業の落ち込みを補っている。
とはいえ、銀行マンは証券マンほど相場に敏感ではないし、リスク性商品の販売に慣れていない。
「顧客に損失が出たとき、証券マンのように頭を下げてうまく丸め込むこともできない」(大手証券の支店営業マン)。そこでお鉢が回ってきたのが、厳しい営業で鍛えられた証券マンというわけである。
さらに、銀行側からすれば、法人営業との相乗効果への期待もある。大手証券の営業マンは、企業の創業者に食い込み、資産運用を提案していくことに長けている。そのため、「法人営業で築いた会社との関係を利用して、オーナー一族の資産管理にまで踏み込めるかもしれない」(銀行関係者)という算段が働くのである。
一方で、就職氷河期世代の数合わせという意味合いもある。大手銀行は、公的資金が注入された1999年から2005年ごろまで採用を大幅に抑制したため30代の人材が不足しているとされる。そのため、氷河期世代は喉から手が出るほど欲しいのが現状なのだ。
いずれにせよ、大手銀行が食指を動かしてきたことで、銀行傘下でない独立系の大手証券が“草刈り場”となるのは必至の情勢だ。中でも業界の盟主、野村證券に比べて、給料が相対的に低い大和証券の営業マンへの引きが強いとみられる。証券マンの人材獲得の動きはますます活発化するだろう。
(週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)