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神奈川県伊勢原市のNPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」が、虐待を受けた子どもへの初期対応に当たる多機関連携チーム(MDT)の創設に向け、活動を続けている。
児童相談所や警察などがバラバラに調査する現在の仕組みでは、つらい体験を何度も語らせることになり、「二次被害」につながりかねない。子どもを傷つけることなく守っていくには、情報共有などを可能にする新制度、法整備が必要だと訴えている。
横浜シンポジア(横浜市中区)で24、25日、同ネットワークなどが主催するシンポジウムがあった。全国から医療、福祉、司法関係者ら約150人が参加。25日には専門家6人がパネルディスカッション形式で議論した。米・コネティカット州検事のスティーブン・セデンスキー氏も登壇。「身体的虐待の発見には教師の存在が大きい。米国では教師がソーシャルワーカーに連絡する」と連携の重要性を訴えた。
米国では、MDTの枠組みの中で「司法面接」も実施されている。専門訓練を受けた面接者が、子どもから虐待の被害状況を聞き取り、検察・警察などがそれを共有し、裁判でも証言として扱われる。「チャイルド・ファースト(子どもが最優先)」の精神・理念に基づく取り組みだ。
日本では、訓練を受けた面接者が聞き取った被害者の証言でも、検察・警察が直接得たものではないため、刑事裁判では原則、証拠採用されない。情報交換・共有の仕組みも整備されておらず、各機関がそれぞれ子どもに事情を聞くが、証言内容が食い違うこともあるという。同ネット理事長の内科医山田不二子さん(54)は「別々の日に違った質問をすれば、子どもの証言が変わってしまうのも当然」とし、「つらい記憶を何度も思い出させて傷つけたうえに、実態が正しく把握されないまま証言の信ぴょう性が疑われ、虐待の証拠として認められないケースも多い」と訴える。
同ネットには、米国で訓練を受けた面接者の女性スタッフが2人いる。これまでも、他県の警察や児相の要請に応じた「出前面接」で子どもの心を開く手伝いをしたり、県内外の関係機関職員らに面接技術の研修をしたりしてきた。
2月7日には、小田急線伊勢原駅南口近くのビルに、児相、検察・警察、医師の3者が1度に面接を行うことが可能な「子どもの権利擁護センターかながわ」をオープンさせる。米国の「司法面接」にならい、面接者が子どもに接し、隣のモニタールームで警察官らが視聴。警察官らが追加質問をしたい場合は、通話回線で面接者に伝えることができる。身体的被害の確認や治療は、同じフロアの診療室で医師が行う。
運用は、児相か検察・警察からの要請が前提となり、同ネット独自に行えるわけではない。ここでの診療も保険適用が認められないなど障壁は多い。
山田さんは「子どもを守るための米国のような取り組みは、欧州やアジア、アフリカなど少なくとも19か国で実施されており、日本は立ち遅れている」と指摘。「縦割り行政の弊害で議論が進まないが、子どもを守ることが何よりも大切。センターの意義などのPRを続け、『チャイルド・ファースト』の精神を訴え続けていく」と話している。センターなどに関する問い合わせは、同ネット(0463・90・2715)へ。(中村良平、山崎崇史)