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コピーライターに聞いたコミュニケーション術(尾形真理子さん) (4) 相手がどう反応するのか、相手がどう思うのかを考える

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コピーライターに聞いたコミュニケーション術(尾形真理子さん) (4) 相手がどう反応するのか、相手がどう思うのかを考える

 コピーライターに聞いたコミュニケーション術(尾形真理子さん) (4) 相手がどう反応するのか、相手がどう思うのかを考える

 

 コピーライターとは、言葉で多くの人とコミュニケーションをとる仕事。であれば、コミュニケーションの第一人者ではないかという観点から、仕事で心がけていることを伺っていくのがこの連載。今回は、ルミネの広告で女心を表し多くの人の心をつかんだ、博報堂 尾形真理子さんにお話を伺った。

メディアが違っても、仕事の考え方は同じ

 尾形真理子さん
 博報堂 クリエイティブデザイン局 コピーライター。ルミネ「わたしらしくをあたらしく」、資生堂インテグレート「ラブリーに生きろ♥」など、多くのコピーで人々の心をつかむ。また、広告業務の他に小説、コラムや歌詞も手がける。2015年より、博報堂の発行する季刊誌『広告』の編集長も兼任。

 ――尾形さんは歌詞や小説も手掛けていますが、コピーとの違いはありますか?

 媒体が違うので、そういう意味での違いはあります。歌詞とコピーはまったく違う、小説とコピーもまったく違う。でも共通してるのはやっぱり人に伝えるときの意識で、相手がどう反応するのか、相手がどう思うのかを考える点では同じです。

 ――例えば最近だと、V6のシングルの歌詞もありますね

 ファンには女性が多いですし、女性が言って欲しいことをV6に歌ってもらおうと思って作りました。あの歌詞のような思いを男性は絶対に口にしないだろうし、考えたこともないかもしれません(笑)。だけど、女性が欲しい言葉を男性に歌ってもらったら、一方的な「俺の歌」ではない失恋の歌になるんじゃないかな、と思ったんですよね。

 V6というメディアがあって、ファンというお客さんがあって、そういった意味では思考回路は同じなんです。

 ――それはとても意外でした

 余談ですが、タイトルの「君が思い出す僕は君を愛していただろうか」を、ファンの方が「だろうか」と略しているらしいと聞いて、センスあるなあと感動しました(笑)。「きみきみ」「きみおも」などの候補があったけど、最終的に「だろうか」に落ち着いたなんて、TwitterなどのSNS文化だな、と思いましたね。

 『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』(幻冬舎文庫)

雑誌とコピーの違い

 ――博報堂さんが出している雑誌『広告』の編集長にも就任されましたが、そちらはいかがですか?

 コピーライターの仕事は、”核”をつくる仕事です。たとえばルミネであれば、「わたしらしくをあたらしく」という核があれば、周りに色々なものがついてくる。資生堂のインテグレートであれば「ラブリーに生きろ♥」です。そういった作り方をしているのですが、雑誌は、核を浮き彫りにする「輪郭線を引く」という意識に近いように思います。その輪郭線となるものを集めて、つくっている感じです。

 ――核と輪郭線の違いはどこにあるのでしょうか

 コピーライターの仕事は、価値を作るいちばん強い言葉があればそれでいい、その他は全部はいらない、というものです。雑誌に関しては、「これだけしかない」というものをなるべく作らないでいたいなと思うから、すごく抽象的なテーマになっています。核を作る仕事では、「水色の自己主張」といった、ふんわりとした輪郭線にはなりません。

 ――これでふんわりとしているのかと、驚きました。世の中にはもっとふんわりしているものがたくさんあるような……

 だとしたらやっぱり、広告のコピーの方が、よりはっきり削ぎ落とされているんだと思います。

 雑誌『広告』397号。テーマは「水色の自己主張」

 ルミネ2014年秋「運命を狂わすほどの恋を、女は忘れられる。」

うまくいかないときに”多様性”が生きる

 ――雑誌「広告」のリニューアル号の特集「水色の自己主張」というテーマについてお聞かせください

 「水色の自己主張」というテーマは、多様性というか、みんなが思ってるけど「そうじゃないかもしれないこと」を見てみたかったんです。うまくいっているときは、大抵ひとつの能力や長所にひっぱられて成長できるのですが、どうにもこうにもうまくいかないときに、ゼロに戻してくれるのは多様性なのではないかと思いまして。声高に叫ばれる主張だけでなく、小さな主張に耳を傾けてみたら、今までにない価値観が自分の中で生まれてくるような。

 人は、ひとつの理由だけで折れるわけじゃなくて、風邪を引いてて、仕事でも怒られて、帰り道で転んだ、みたいな。3つくらいの理由でもう明日会社行きたくないと思うでしょう。そのときに色々なことでリカバーできた経験に支えられているような気がします。

 ――そういった、経験から生まれた考えを試せる場にもなっているんですか?

 そうですね。いずれその経験が、コピーにも戻ってくるんだと思います。『広告』の編集長を特にやりたいと思っていたわけではなかったけれど、乗ってみると学ぶことがあります。

 ――今後の予定はいかがですか?

 4月19日に「3cmのいたずら心」という特集テーマで最新号が発売されました。全部がいたずらってことではなくて、一部いたずらがあることで、全体が変わってくる、全体を変える力のあるいたずら心という意味なんです。非常に抽象的で、編集部員から散々わからないと言われながらもできあがりました(笑)。

 古今東西のいたずら心をピックアップした特集企画となっています。どうか手に取ってご一読いただければ嬉しいです。

 ――ありがとうございました

 雑誌『広告』最新号の特集テーマは「3cmのいたずら心」

『広告』
 1948年創刊。博報堂の社員が中心となって編集制作を担当している。397号~404号の編集長として尾形真理子さんが就任し、「なぜか愛せる人々」をテーマに展開している。現在発売中の398号では特集テーマとして「3cmのいたずら心」を掲げている。インフォメーションサイトはこちら。

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