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映画『ターミネーター2』(1991年)には、どのような物にも擬態できる液体金属製のターミネーター「T-1000」が登場し、主人公たちを苦しめた。CGを用いた斬新な表現に、当時ド肝を抜かれた人も多いのではないだろうか。しかし、映画の公開から20年以上を経て、実際にこのようなロボットの開発につながる可能性を秘めた発見がなされたようだ。
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■不思議な金属の正体とは!?
今月3日、学術誌「Advanced Materials」上で"自在に変形し、自ら駆動する"驚くべき金属についての研究成果を発表したのは、中国・清華大学のチン・リウ博士が主導するグループだ。それによると、不思議な金属の正体とは決して未知の物質ではなく、液体のガリウムにインジウムとスズを加えた合金であるという。この液体合金を、水酸化ナトリウム溶液(または塩水)に浸し、そこに"燃料"となるアルミニウム片を入れると、一定の間だけ動きはじめることが判明したのだ。容器次第で、形を変えながら直線や曲線を辿ったり、円を周回するなど様々な動きが可能であるとのこと。
■動きのメカニズムが判明!!
「この不思議な振る舞いは、自然界の微生物とよく似ています。生物の定義とは何なのか、改めて考えさせるものです」
こう語るリウ博士だが、今回の現象に初めて触れた時には、事態をまったく呑み込むことができなかったという。しかしその後の実験によって、液体合金が自在に変形し、自ら駆動するメカニズムが次第に明らかになってきた。まず、液体合金中で電荷の不均衡が起き、圧力の差により推力が生じていることが判明。そして、アルミニウム片が水酸化ナトリウムと反応することで生じる水素の泡が、動きを加速させていることが確認されたのだ。
さらにリウ博士たちは、液体合金を固定している場合には、毎秒50mlの水を動かす(移し替える)ポンプのような役割を果たすことも確認、「外部電源を必要としない、世界初の冷却装置の実現に今すぐにでも応用可能」としている。
■科学者たちが目指すもの
昨年、リウ教授の研究グループは、米・ノースカロライナ州立大学のマイケル・ディッキー教授のチームとともに、液体合金に電流を加えて思い通りの形にしたり、元に戻すことに成功している。今回の研究成果と併せて、液体合金の集団を統制するなど、より思い通りに液体合金を操ることが可能になるらしい。
もっともこの研究は、自在に変形しながら活動することができる「T-1000」のようなロボットを生み出すための、ほんの始まりに過ぎない。しかしリウ教授たちは、まず「T-1000」よりも現実的で、近い将来を見据えた目標を立てているようだ。今回の研究をさらに推し進めることで、「血管の中を自由に動き回って患部に薬を届けたり、体内の状態を検査することができる小さなロボットも、遠くない将来に実現する」というのだ。
映画『ターミネーター2』の設定上は、2029年に「T-1000」が開発されることになっている。今後、リウ博士たちの研究が劇的な進展を見せた場合、それに近いものが誕生している可能性もあるかもしれない。期待とともに漠然とした不安を抱いてしまうのは、映画を意識し過ぎだろうか?