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総じて男性優位の自治体選挙に、女性たちが各地で挑んだ。26日投開票された統一地方選後半戦の兵庫県明石市議選では、無所属の新人、家根谷(やねたに)敦子さん(55)が当選した。生まれつき耳が聞こえず、手話の訴えを娘たちが通訳した。全日本ろうあ連盟(東京都)によると、耳が聞こえず、声も出ない議員は国政も含めて全国で初めてという。【宮嶋梓帆】
【女性市長最多4人当選】
家根谷さんは会社員を経て1995年の阪神大震災でボランティア活動に従事。その際に災害弱者への支援が不十分だと感じ、明石ろうあ協会事務局で障害者の支援活動を始めた。2007年から明石市の障害者相談員を務めている。
鳥取県で13年10月、手話を言語と認めて学ぶ機会を保障する「手話言語条例」が施行され、政治に興味を持った。昨秋、明石市で同様の条例の検討会があり、必要性を訴えて実現に奔走。条例は今年4月に施行された。
「政治の場でも手話を認めてもらおう」と立候補を決意。「手話で演説中」というカードを掲げ、駅やスーパーの前に立った。「障害のある子が地域の学校に通える制度を」「災害時に障害者に情報を伝える仕組みを拡充したい」。次女の智美さん(28)や三女の明美さん(20)が手話通訳を担い、母の思いをマイクで訴えた。
「本当に議員活動ができるのか」。有権者からそんな言葉も浴びせられた。「障害があってもやれると理解してもらうために決意しました」「手話も言葉です」。支持が広がっていった。演説を聞いた女性が覚えたての手話で「頑張って」と話しかけてくれ、うれしかった。「私の挑戦が後に続く人たちの希望になれば」と戦い続けた。
家根谷さんは明石市の事務所で深夜、当選確実の知らせを受けると、手話で「たくさんの方の支援のおかげで当選できた。本当にありがとうございました」と何度も繰り返し、支援者らと抱き合って喜んだ。親族から贈られた明石産のタイを高々と掲げ、涙を流しながら「壁はあると思うが乗り越えていきたい」と決意表明した。
全日本ろうあ連盟などによると、01年の長野県白馬村議選で聴覚障害の女性が当選して1期4年務めたが、不自由ながらも話すことはできた。耳が聞こえず声も出ない議員は過去に例がなく、明石市議会事務局は本会議での手話通訳者や要約筆記者の配置を検討している。