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<寺社油被害>証拠採取や修復、難航 16件に拡散

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<寺社油被害>証拠採取や修復、難航 16件に拡散

<寺社油被害>証拠採取や修復、難航 16件に拡散

奈良や京都の寺社などで油のような液体がまかれる被害が相次いでいる。9日になり、東寺(京都市南区)▽橿原神宮(奈良県橿原市)▽安倍文殊院(同県桜井市)--で新たに発覚したほか、遠方の金刀比羅宮(ことひらぐう)(香川県琴平町)▽香取神宮(千葉県香取市)▽鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)--でも模倣犯を思わせる被害が確認され、被害は16件に達する。警察当局は文化財保護法違反などの容疑で捜査を進めているが、対象が文化財だけに証拠物の採取は難航。寺社も警戒を強めるが「信心を持って訪れる人を疑いたくない」との声もあり、対策は容易ではない。【小坂剛志、芝村侑美、松本博子、花澤茂人】

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 もっとも被害の多い奈良県内では11カ所の被害が確認された。いずれも油のような染みが床や壁、仏像などに残っていた。「ヘアトニックのようなにおいだった」と証言する寺関係者もいる。

 この問題が報道され始めたのは今月4日。奈良県警などの調べでは、犯行の多くは3月28日ごろから今月9日までの長期にわたっており、模倣犯の可能性も含めて捜査している。ただ、防犯カメラがなかったり、故障したりしていた寺社も。成分検出に必要な量のサンプルが採れないなど、文化財ゆえの壁にも直面している。

 今後、被害を受けた文化財の修復は、警察による成分分析などを待って行うことになる。元興寺文化財研究所保存科学センター(奈良県生駒市)の植田直見・研究部副部長によると、油分に合う溶剤を湿布して染み出させるといった処置が考えられる。

 ただ、植田副部長は「修復で文化財を傷めないよう予備的な実験も必要。木材の内部へ染み込んだものまでは除去できない。表面に顔料がある場合は更に条件が厳しく、慎重な検討が求められる」と指摘している。

 被害拡大を受け、文化庁は8日、防犯の強化や被害があった際の連絡体制の確認を求める文書を各都道府県教委に出した。国宝の御影(みえい)堂など5カ所で油のような液体がまかれた世界遺産の東寺では、普段から警備員が6人体制で境内を見回るが、今回の事件を受けて巡回の回数を増やした。境内に約60カ所ある防犯カメラの映像も警察に提供したという。約20カ所に油のようなものがまかれた世界遺産・二条城(京都市中京区)でも、これまでは城の案内係の職員が見回りを兼務していたが、4月からは制服を着た警備員を巡回させている。

 ただ、寺社は人々に開かれた信仰の場で、寺側にジレンマもあるようだ。被害に遭った飛鳥寺(奈良県明日香村)の植島宝照住職は「信仰などで多くの人が訪れる以上、来ていただいた方々を疑いの目で見たくない」と漏らす。

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