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国会での議員立法に相当し、自治体議会の活発度や改革度を測る指標とされる政策条例だが、その代表例である「乾杯条例」が増殖中だ。ついに今年、条例を設けた自治体は100を超えた。ビールなどではなく地元の酒で乾杯し、地産地消を図ろう--という趣旨だが、多くは先行事例をコピーしただけだとして、議会の「政策力」を疑問視する声が上がっている。【深津誠】
【チェック】ユニーク条例の効果とブームの理由を探る
「乾杯条例」は、地元の酒を普及促進するために自治体と酒造業者、住民が協力するという内容で、従わなくても罰則はない。日本酒造組合中央会の集計では101自治体(2月5日現在)に上る。
出発点は、京都市議会が2012年12月に可決した議員提案の「清酒の普及の促進に関する条例」だった。
日本酒離れに危機感を抱く京都の伏見酒造組合は、市内のホテルや旅館に酒を無償提供し、乾杯してもらう活動を10年ほど前から続けてきたが、売り上げは減り続けた。
自身も蔵元である組合理事長の増田徳兵衛さん(59)は12年春、議会に条例化を持ちかけた。他の伝統産業への配慮に欠けるとして当初反対されたが、議会改革の一環で「政策条例を積極的に作りたい」との議論もあり、可決にこぎ着けた。条例ができて蔵元の売り上げは微増に転じた。
条例を提案した京都市議会の寺田一博議員は、「行政が取り組みにくいテーマを議会主導で形にできた」と振り返った。
それから2年あまりで、条例は各地に急速に広がっていく。
後発組には、京都市の「清酒」を「ワイン」(北海道富良野市など)や「焼酎」(宮崎県日南市など)に差し替えたり、「乾杯する器も特産の焼き物で」(愛知県常滑市など)と地酒に組み合わせたりとバリエーションが広がっている。
だが、その多くは京都市条例と中身も構成も同じだ。条例を提案したある県議は、「議員提案の政策条例が少なくて、何か作りたかった気持ちはある」と打ち明けた。
一方、そうした流れに同調しなかった議会もある。
売り上げ全国トップの焼酎メーカー「霧島酒造」がある宮崎県都城市議会。商工会議所は13年、焼酎の乾杯条例制定を求める陳情書を出したが、市議会は「個人の嗜好(しこう)の問題」などとして反対多数で不採択とした。神脇清照議員は「市内にはワイナリーもあり、安易に縛ることは避けたいという意見が多かった」と振り返る。
◇「批判かわすため」川崎市議の苦言
「政策立案できない議会への批判をかわすために、既に実績のある条例のコピーに飛びつくのではないか」。乾杯条例が広がっていく現状に、川崎市議会の小川顕正市議(31)は苦言を呈した。
川崎市では2008~11年、3件の乳幼児の虐待死事案が相次いだのを受けて12年、神奈川県内では初の児童虐待防止に関する条例が制定された。超党派の議員がプロジェクトチームを作って提案した政策条例だ。
区役所が乳幼児検診などで情報を得ても、児童相談所が人員不足で対応できないことが背景にあるとみて、「区役所の体制強化」などを条例案に盛り込んだ。これを契機に市は13年度、虐待対応の窓口を区役所に一本化し、保育や心理の専門職を七つの区役所に約10人ずつ配置するなどの対応につながった。
条例制定の中心となった小川議員は、「地域の課題は市民に近い議員が掘り起こして政策立案する必要がある。全国一律の仕組みでは対応できない」と、議員提案の政策条例の意義を強調。他の自治体と類似の条例を作る風潮を疑問視している。