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全校児童の95%に虫歯が一本もない小学校がある。昨年度の「全日本学校歯科保健優良校表彰」小学生の部で最優秀賞を受賞し、“歯の健康日本一”に輝いた横浜市立中尾小学校(同市旭区)。全国平均では児童の半数に虫歯がある中、なぜ劇的な効果を挙げられたのか。学校を訪ねると、そこには熱心な学校歯科医の存在があった。
「この奥歯の上が磨けていないよ」「歯並びが悪い場所は、歯ブラシを縦にして磨いてごらん」
23日に行われた5年生の歯科検診では、学校歯科医の江口康久万(やすくま)さん(55)が、一人一人の磨き残しをチェックしていた。虫歯が見つかる児童はほとんどいない。
25年ほど前に、同校の学校歯科医になった江口さんは年14回のペースで来校する。通常の学校歯科医よりも頻繁に顔を出し、児童の歯のケアに注意を払ってきた。
江口さんは言う。「特に子どもの場合は利き腕の反対側の歯が磨きにくく、奥歯を磨くにはこつがいる。自分がうまく磨けない場所を理解することで、正しい磨き方が身に付く」
磨き残しがあった場所は、組み立てると口の中の模型になるペーパークラフトに書き込み、一人一人に手渡す。自宅に持ち帰り、磨き方のくせを親子で理解してもらう。
同校は2007年、同市学校保健会から歯科保健の研究校の指定を受け、全校を挙げて予防に取り組み始めた。歯磨きを習慣付けるため、給食後に全校一斉の「歯磨きタイム」がある。教室に歯磨きソングの音声と映像を流し、5分間かけて歯を磨く。
授業にも虫歯予防を取り入れ、江口さんも教壇に立つ。児童は虫歯予防の劇を披露し、クイズ大会も開かれる。毎月8日は使っている歯ブラシを親子で点検するほか、保護者向けの歯科予防教室もあり、家族で虫歯予防に取り組んでもらう。
こうした取り組みで、昨年度の6年生1人当たりの永久歯虫歯の本数(治療済みの歯を含む)は0・13本で、全国平均の0・7本を大きく下回った。
高橋宏明校長は「正しい歯磨き習慣は一生の宝物。学校と家庭、学校歯科医の協力で、子どもの歯の健康を守っていきたい」と話している。