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世界遺産の熊野古道「大雲取越(おおぐもとりごえ)」にある名所、円座石(わろうだいし)=和歌山県新宮市熊野川町=を覆っていた苔(こけ)がなくなり、茶色の石がむき出しになっている。原因ははっきりしないが、人為的に削り取られた可能性があり、市教委は困惑している。
【写真】苔が全面を覆っていた円座石=新宮市熊野川町、市教委提供(2014年6月)
大雲取越は、中辺路ルートの一部で、熊野那智大社(那智勝浦町)から新宮市熊野川町小口までを結ぶ約14・5キロ。円座石は大雲取登り口から徒歩約20分。幅3・5メートル、高さ1・5メートル。円座とは座布団のことで、熊野三山の神々がこの石に座って談笑したという伝説が残る。石には本宮を表す「阿弥陀仏」、新宮の「薬師仏」、那智の「観音仏」がそれぞれ梵字(ぼんじ)で刻まれている。
円座石は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」のコアゾーン(登録資産)ではないが、バッファーゾーン(緩衝地帯)に含まれている。苔むした姿で知られ、古道を歩く人たちの人気を集めてきた。
その苔が姿を消しているのがわかったのは昨年12月初旬。熊野古道の「語り部」が見つけ、田辺市本宮町の県世界遺産センターに届け出た。管理する新宮市教委に連絡があったのは今年2月ごろという。
市教委の文化財担当者は「前のように苔が生えるのはいつになるかわからない。人為的であれば、許し難い。文化財は大切にしてほしい」と話している。(杉山敏夫)