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原発から30キロ圏内にある立地自治体以外の周辺117市町村で、過半数の首長が立地自治体のみの同意で再稼働を進めることに反対していることが毎日新聞の全国調査で分かった。同時に周辺市町村の4割以上が国の原発政策に「自治体の意向が反映されていない」と考えている。再稼働の手続きに加われないことに不満を持つ自治体が多い現状は、今春の統一地方選にも影響しそうだ。
【原発30キロ圏の首長はどう考えているのか?】
1月下旬から、国が原発事故時の緊急防護措置区域(UPZ)と定める135市町村に、稼働に向け安全審査中のJパワー(電源開発)大間原発(青森県)の30キロ圏4市町村を加えた139市町村の首長にアンケートを実施。全首長が回答した。
九州電力川内原発の再稼働の地元同意手続きは立地する鹿児島県と薩摩川内市だけで行われた。この方式について、原発が立地する22市町村では半数の11市町が「妥当だと思う」と理解を示し、「妥当だと思わない」としたのは1村だった。一方で、原発から30キロ圏内にあるその周辺の117市町村は過半数の60市町村が妥当だと思わないとし、妥当としたのは14市町村だった。「周辺自治体の住民は再稼働に重大な関心を寄せており、もはや立地自治体の意向のみで解決しがたい」(静岡県藤枝市)などの声が出ている。
新規制基準に適合した原発の再稼働について尋ねたところ、立地自治体22市町村では9市町村が「再稼働してもよい」としたのに対し、「再稼働するのはよくない」としたのは5町村。一方、周辺117市町村では3分の1にあたる39市町村が再稼働するのはよくないと答え、再稼働してもよいとしたのは23市町村だった。立地自治体と周辺自治体の温度差が目立つ。
周辺117市町村のうち52市町村長が国の原発政策について「自治体の意向が反映されていない」とし、「反映されている」としたのは34市町村にとどまった。反映されていないとした52市町村のうち29市町村が再稼働するのはよくないと答えた。
またUPZ内の21道府県知事にも同様のアンケートを実施した。立地自治体のみの同意で再稼働を進めることについて妥当と回答したのは、立地自治体の福井と鹿児島の2県。妥当だとは思わないと回答したのは、立地自治体では茨城、静岡の2県、周辺自治体では滋賀、京都、鳥取、長崎の4府県だった。
周辺自治体には再稼働について発言権がなく、住民の意向を反映させる方法がない。「国と直接協議できる場がない」(北海道倶知安町)▽「原発政策では住民の理解が最も重要だが、自治体の意向は反映されていない」(静岡県袋井市)▽「自治体の声を国に伝える機会や手法がない」(水戸市)--などの不満が出ている。【内田久光】
<原発30キロ圏首長アンケートの対象自治体>※は立地自治体
■139市町村
【泊原発】(13町村)※北海道泊村▽共和町▽岩内町▽神恵内村▽寿都町▽蘭越町▽ニセコ町▽倶知安町▽積丹町▽古平町▽仁木町▽余市町▽赤井川村
【東通原発】(5市町村)※青森県東通村▽むつ市▽六ケ所村▽横浜町▽野辺地町
【女川原発】(7市町)※宮城県女川町▽※石巻市▽登米市▽東松島市▽涌谷町▽美里町▽南三陸町
【福島第1・第2原発】(13市町村)福島県いわき市▽田村市▽広野町▽南相馬市▽川俣町▽川内村▽※大熊町▽※双葉町▽浪江町▽※富岡町▽※楢葉町▽葛尾村▽飯舘村
【柏崎刈羽原発】(9市町村)※新潟県柏崎市▽※刈羽村▽長岡市▽上越市▽小千谷市▽十日町市▽見附市▽燕市▽出雲崎町
【東海第2原発】(14市町村)※茨城県東海村▽日立市▽ひたちなか市▽那珂市▽常陸太田市▽常陸大宮市▽城里町▽水戸市▽茨城町▽大洗町▽高萩市▽大子町▽笠間市▽鉾田市
【浜岡原発】(11市町)※静岡県御前崎市▽牧之原市▽菊川市▽掛川市▽吉田町▽袋井市▽焼津市▽藤枝市▽島田市▽森町▽磐田市
【志賀原発】(9市町)富山県氷見市▽※石川県志賀町▽七尾市▽輪島市▽羽咋市▽かほく市▽宝達志水町▽中能登町▽穴水町
【敦賀・美浜・大飯・高浜原発】(23市町)岐阜県揖斐川町▽※福井県敦賀市▽※美浜町▽小浜市▽※おおい町▽※高浜町▽南越前町▽鯖江市▽越前市▽越前町▽池田町▽福井市▽若狭町▽滋賀県長浜市▽高島市▽京都府舞鶴市▽京都市▽福知山市▽綾部市▽宮津市▽南丹市▽京丹波町▽伊根町
【島根原発】(6市)鳥取県米子市▽境港市▽※島根県松江市▽出雲市▽安来市▽雲南市
【伊方原発】(8市町)山口県上関町▽※愛媛県伊方町▽八幡浜市▽大洲市▽西予市▽宇和島市▽伊予市▽内子町
【玄海原発】(8市町)福岡県糸島市▽※佐賀県玄海町▽唐津市▽伊万里市▽長崎県松浦市▽佐世保市▽平戸市▽壱岐市
【川内原発】(9市町)※鹿児島県薩摩川内市▽いちき串木野市▽阿久根市▽鹿児島市▽出水市▽日置市▽姶良市▽さつま町▽長島町
【大間原発】(建設中、4市町村)北海道函館市▽※青森県大間町▽風間浦村▽佐井村
■21道府県
※北海道▽※青森県▽※宮城県▽※福島県▽※新潟県▽※茨城県▽※静岡県▽富山県▽※石川県▽岐阜県▽※福井県▽滋賀県▽京都府▽鳥取県▽※島根県▽山口県▽※愛媛県▽福岡県▽※佐賀県▽長崎県▽※鹿児島県
【ことば】原発再稼働の地元同意
同意の範囲などに法律上の明確な根拠はない。福島第1原発事故後の新規制基準に適合し、地元同意手続きを終えた九州電力川内原発の場合は、立地する鹿児島県と薩摩川内市が九電と結ぶ安全協定を根拠に、同意を必要とする範囲を「県と薩摩川内市」とし、市議会、市長、県議会、知事の順に同意を表明した。国は川内の方式をモデルに他の原発の再稼働も目指している。