地下鉄サリン事件２０年を前に開かれたシンポジウムで、当時の状況を振り返る元警視庁警察官の稲冨功氏（右端）と元裁判官の山室恵氏（左から２人目）ら＝１４日午後、東京都内

　 　死者１３人、負傷者６０００人超の被害を出した地下鉄サリン事件から２０年がたつのを前に、オウム真理教犯罪被害者支援機構（理事長・宇都宮健児弁護士）が１４日、東京都内でシンポジウムを開いた。「事件を防ぐことはできなかったのか」。捜査や裁判などに関わったパネリストらが当時の状況を振り返った。
　　１９９５年３月２０日に起きた地下鉄事件。２日後に強制捜査が行われたが、元警視庁警察官の稲冨功氏（６８）は「３日前に自衛隊でガスマスクの装着訓練を受けたが、何のためか教えてくれなかった。当日の資料は（教団施設の）航空写真１枚だけだった」と述べ、警察内部でも秘密保持が徹底されていた実態を明かした。
　　サリン散布役らに一審判決を言い渡した元裁判官の山室恵弁護士（６７）は「サリン事件を防げなかった責任は警察、マスコミ、司法にある。失敗した原因を改めて検証し直すべきだ」と指摘した。
　　９４年６月の松本サリン事件で、サリン分析に関するアメリカ陸軍の情報を日本の警察に伝えたコロラド州立大学名誉教授のアンソニー・Ｔ・トゥー氏（８４）も「日本の警察は９４年９月には土壌からサリンを検出する方法を知っていた。科学的証拠を握った時点で、オウムの施設を捜査すべきだった」と批判した。