社会そのほか速
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一念発起して会社を興し「社長」になるだけが起業ではない。趣味や特技に特化したビジネスを「個人事業主」として始めることも可能だ。学生時代から登山やクライミングを趣味にしてきた海田勝氏(62)は、東京・板橋区でボルダリングジム「Nuts!」を2011年に開業した。
ボルダリングとは、室内の壁に作られた「ホールド」と呼ばれるカラフルな突起を、ロープやハーネスを使わずに登るスポーツだ。大がかりな道具などは必要なく、屋内で気軽に楽しめるスポーツとして若者を中心に人気となっている。
海田氏は舞踏俳優として活躍した後、舞台美術会社で舞台やコンサート会場の設営に携わってきたが、「50歳を過ぎて体力的にきつくなってきた」ために57歳で退職した。
「自分の老後のイメージとしては、のんびり座っていられる風呂屋の番台のオヤジのような仕事に憧れがありました。屋内ジムならその夢を仕事にできるのではないかと考えました」(海田氏)
広さも高さも必要な本格的なクライミングジムの建設は最低でも3000万円かかる。そこで近年、競技人口が増えているボルダリングジムを開くことにした。
「最初の難題は場所探しでした。退職の1年前から、自宅から半径4キロ、自転車通勤30分の範囲でボルダリングの壁を設置できる1~2階吹き抜けの不動産物件を探し回りました」(海田氏)
舞台美術の経験からジムの内装などは算段が立ったが、経理などの手続きは全くわからなかった。
「見かねた妻が東京都の中小企業振興公社の開催していた『シニア向けの起業セミナー』があることを教えてくれたんです」(海田氏)
そこで事業計画書や売り上げや支出を見積もる目論見書の書き方を教わり、ジムの内装の発注と同時進行させた。
現在、月の平均売り上げは約60万円。ジムの家賃やアルバイトスタッフの人件費など差し引けば、「収支はトントンか赤字。自分の生活費は年金や貯蓄で賄っています」(海田氏)という。
それでも、オープン以来の会員数は2000人を超え、毎月のべ約400人が壁登りを楽しみにやってくる。海田氏が語る。
「登山にしろ、クライミングにしろ、登ることが好きなんです。自分でも登ったり、初心者に教えたりしていますが、受付に座ってお客さんの登る姿を見ているだけでも楽しい」
※週刊ポスト2015年3月27日号