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日本の食卓の定番、納豆といえば、糸を引く「ネバネバ」でおなじみ。だが、「水戸納豆」など古くからの一大生産地として知られる茨城で、その常識を覆す“粘らない”納豆が開発され、注目されている。1月にフランスの食品見本市に出展したところ、次々と商談が舞い込んでいる。
茨城県と県内の納豆メーカーなどが昨年開発し、統一ブランドとして商品化した「豆乃香(mamenoka)」(市販時期、価格未定)。通常の納豆より糸引きが少ないのが特徴で、箸でつまむとぽろぽろとこぼれ落ちる。粘り気を減らすことで「豆の香り」が引き立ち、加熱などの調理もしやすいという。
全国納豆協同組合連合会によると、納豆の国内年間消費金額はここ10年ほど縮小傾向にある。商品開発は納豆の苦手な人や海外に市場を開拓するのがねらい。ユネスコの無形文化遺産登録などの和食人気を追い風に、チーズなどの発酵食品を好むヨーロッパ圏を中心に売り込みをかけている。
ところで、なぜ粘らないのか-。
その秘密は、特別な“菌”にある。納豆メーカーから依頼を受けた茨城県工業技術センター地場食品部門主任、久保雄司さん(33)は一昨年、通常の納豆菌から自然変異した菌株を、培地に植え継ぐ方法で、糸引きのもととなる「ポリグルタミン酸」の生成能力が低い菌の培養に成功した。
納豆を試作しては糸引きを確認する「ひたすら地味で孤独な作業」を100回以上繰り返したという久保さんは「こんなに反響があるとは思いませんでした」とうれしそうだ。
この菌を使い、いち早く商品開発に着手した常陸太田市の納豆メーカー「金砂郷食品」の永田由紀夫社長(52)は「『糸を引いてこそ納豆』という声は業界でも非常に根強い」と打ち明ける。それでも、「納豆の食文化を守るためにも、“オール茨城”で挑戦する最後のチャンスだと思った」。永田さんらの声かけで県内の納豆メーカー7社が商品化に手を挙げた。
1月にフランス・リヨンで開かれた見本市では、豆乃香を使ったバターや煮込み料理なども提案し、食材としての可能性をアピール、100件以上の引き合いがあった。
永田さんは「今、海外で日本食が受け入れられているのも、『豆腐』や『しょうゆ』を売り込んできた先人の努力があったからこそ。『納豆』が次世代に選ばれるような付加価値をつけていきたい」と意気込んでいる。(水戸支局 緒方優子)
■私のふるさと埼玉
草加市出身。お土産はもちろん「草加せんべい」。災害時の保存食として活用されるほど、飽きのこないおいしさです。