社会そのほか速
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「女は灰になるまで……」という言葉がある。
江戸時代に大岡越前守が老母に「女性はいくつまで性交(まぐあい)の欲望があるものか」と聞いたところ、母親は黙して語らぬまま、火鉢の灰をならしていた。母親が「女性の性欲は灰になるまで=死ぬまで」と伝えたかったのかどうかはわからないが、息子はそう解釈したらしい。
こんなエピソードとともに広く人口に膾炙した言葉だ。あらゆる意味で「豊かな老後」を送るお年寄りも多く、老人ホームでは、一人のおじいちゃんを、二人のおばあちゃんが取り合いをする、なんて話も聞くが、「灰になるまで」とはスケールが大きい。
一方で、30代後半の友人S子が「プチ更年期」の症状に悩み、病院に行った、という話を聞いた。彼女は今、女性ホルモンの注射を打ってもらっているらしいが、性生活がないことも、遠因ではないかと本人は悩んでいる。
5年前から同棲している彼とは、4年以上ご無沙汰らしい。といっても、彼は優しく、結婚の意思もあり、年内に両家の顔合わせ、なんていう話もしている。ただ、このまま結婚していいのかを、彼女は悩んでいる。冒頭の話とはまるで異なり、もし彼女がこのまま結婚しても、「灰になるまで」夫婦生活は望めないだろうし、あったとしても、子供をつくる手段でしかないだろう。
女性にとって、体を重ね、愛情を感じる瞬間は大きな「幸せ」であると思う。その安心感や充実感は、心身のバランスを保ってくれる。彼女の言うとおり、彼女の「プチ更年期」は心身が失ったバランスのあらわれかもしれない。実際に彼女は、同棲相手にとって自分は「女として魅力がないのか」とか「この結婚は惰性なのか」など深く悩んでいる。
私としては、体を重ねることだけが愛情表現ではないと思っているが、結婚前からその状態は不自然であるし、よく考えた方がいい、としか彼女に言えなかった。一緒に暮らした5年間の歴史とすぐには断ち切れない情があるし、価値観や性格的、経済的な面で何も問題がないだけに、決断は難しい。きっとS子の彼氏には、S子には言えない、男の言い分があるのかもしれない。しかし、こればっかりは、二人で話し合い、なんていうのも好転は望めそうにない。最終的には、彼女が自分で決めること。
性体験の若年化が進む一方で、S子以外でも夫婦や成熟した恋人間のセックスレスの話題はよく耳にする。江戸時代から時代は進み、男女の社会的役割もほぼ同じになり、男性も女性も中性的になったことが理由かもしれない。
しかし、いつの時代も女性とは、「愛されている」という、「証」が欲しいのだ。
言葉でもなく、プレゼントでもない、「証」が……。それは、「性欲」などではなく、「切なる願い」のようなものなのか。S子の苦渋の顔を見ながら、そんなことを感じたのだった。
(綾乃/初音と綾乃)