社会そのほか速
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日本マクドナルドホールディングス(以下、日本マクドナルド)が、昨年7月に発覚した中国食品会社の使用期限切れ鶏肉使用問題に端を発し、その後、立て続けに起こった異物混入問題で客離れを起こし、1971年7月に銀座三越(東京)に第1号店を開業して以来の未曾有の経営危機に直面している。
日本マクドナルドの2014年12月期決算は売上高約2223億円(前期比14.6%減)、営業損益は約67億円の赤字、最終損益は当初予想の170億円を48億円も上回り約218億円の大赤字となった。最終損益が赤字になるのは03年12月期以来、11年ぶりのことだ。ちなみにFC(フランチャイズチェーン)を加えた全店売上高は約4463億円(同11.5%減)。また店舗数は直営が1009店、FCが2084店の合計3093店であった。
創業以来の悲惨な決算に拍車をかけたのが、今年1月の既存店売上高が前年対比38.6%減と、4割近くも落ち込んだことだ。客数も28.5%減と大幅に落ち込んだ。「マクドナルド離れ」は深刻な状況にある。この異常ともいえる落ち込みに、日本マクドナルドでは「今期の業績予想や配当は未定」として発表しなかった。
一連の品質問題と業績悪化の原因をつくりだしたのは、現会長で前社長兼CEOである原田泳幸氏時代の経営だという指摘が数多くなされている。
原田氏は04年4月21日に日本マクドナルド創業者の藤田田氏が死去した直後に同社社長に就任した。藤田氏は米マクドナルド創業者のレイ・クロック氏が日本マクドナルドの合弁企業相手に選んだ人物で、日本マクドナルドを大成功させた大立者である。米本社は何よりも先に、藤田氏の社葬を開催するか、それが無理なら会社主宰の偲ぶ会を開催すべきであった。ところが、米本社には藤田氏を丁重に葬送するという発想がなかったどころか、これをチャンスと見て「藤田経営の破壊」を仕掛けるのだ。
米本社の考えを経営に反映できる代理人として、アップルコンピュータ社長だった原田氏をスカウトし、04年5月に日本マクドナルドの社長に就けるのだ。原田氏がアメリカ本社から叩き込まれたミッションは、「藤田経営潰し」であり、「藤田派幹部の一掃」であった。原田氏が日本マクドナルドのトップとして乗り込んで最初の取締役会で英語のスピーチを行い、「バスに乗る者はバスに乗れ! そうでない者は辞めろ」という方針を明確に示した。こうして藤田派の経営幹部の切り捨てが始まったのである。●「藤田=悪の権化」を切り捨て
原田氏はアメリカナイズされた合理主義者である。日本式の礼儀や義理人情は一切通用しない。ひたすら米本社に忠誠を誓い、自らの保身に汲々とした。藤田氏の偉大さや功績、その起業家精神をも自らの意思で評価しようとしなかった。米本社も藤田氏へのリスペクトもなく、「藤田=悪の権化」として切り捨てることで日本マクドナルドが再構築できると思っていた。原田CEO時代、日本マクドナルドのホームページからは藤田氏の痕跡が消された。
原田氏は米本社から与えられたミッション、すなわち藤田氏の功績の抹殺、藤田派の幹部の切り捨て、経営システムの破壊などを進めた。原田氏の経営についてはすでに数多く報じられているのでここでは詳しくは触れないが、2つだけポイントを取り上げよう。
一つが、日本マクドナルドの根幹にある「品質管理システム」をコスト削減の名目で外部に委託したことだ。このため一連の異物混入問題が発生した時、その実務を担える人材が流出していたために対応できなかった。原田氏が行き過ぎた組織破壊を進めて人材を流出させたことが、このような問題を引き起こした。
もう一つがFC化率を高めたことだ。藤田時代、のれん分けのかたちで独立させたFCが全体の3割にとどまっていたのに、FC化率を7割まで高めた。直営店舗をFCオーナーに売却し、大ざっぱに約150億円の利益を出した。原田氏が推進したFC化率7割は、ハンバーガー大学のようなかたちで藤田氏が構築してきた教育研修システムを破壊した。
「FC化を進めたことで、現場のクルーのモラルは大きく下がりました。藤田時代ならアルバイトにも研修を受けさせ、アルバイトから社員になる人も多かった。社員になるとマネージャー教育が受けられ、経験を積んで複数店を管轄するスーパーバイザーに昇格すれば米国研修へ行けるといった研修システムが出来上がっていました。やる気のある人材が登用されるケースがよくありました。ところがFC化すると、アルバイトから本部の社員に登用されることが難しくなります。また、アルバイトもFC店では出世できても、本部の社員として活躍する道が閉ざされ、どうしてもモラルが下がってしまうのです」(マクドナルド研究の第一人者で関西国際大学教授の王利彰氏)
店舗でのクルーのモラルの低下は、相次いで異物混入問題が起こる引き金になった。
ところでFCオーナーの8割以上は元社員であり、店長、スーパーバイザーなどの経験のある中堅幹部だ。藤田時代の教育システムで育ってきた人が多く、原田氏にしてみれば抵抗勢力になる人たちだった。
原田氏は抵抗勢力に対してはアメとムチで対応した。例えば07年11月、抵抗勢力のFCオーナーたちが「社内基準を過ぎたサラダを賞味期限偽装で販売」していたのを捉え、偽装が発覚した4店舗のFC契約を解除し、直営に移行させた。一方、原田氏に尻尾を振ってくる人たちを取り込み、直営店を売却しFCオーナーとして独立させた。
原田氏は04年5月に日本マクドナルドのCEOに就き、13年8月、カサノバ氏にCEOを譲って代表権のない会長に退いた。原田氏は藤田時代の役員をすべて解任し、原田氏が就任中だけで役員が3回交代、就任時に外部からスカウトしてきた取締役も全員退任させてしまうなど、独裁的な経営手法で有能な役員、経営幹部、中堅幹部などを辞めさせた。その結果、カサノバ氏のブレーンには使える人材が残らず、それが異物混入問題の傷をより深くしたといわれる。
原田氏の2大愚策といわれるのが、12年に実施したカウンターからのメニュー撤去、もう一つが13年に実施した、60秒以内に商品が提供できなければ無料券を渡すというキャンペーンだ。どちらも客のことも店舗スタッフのこともわかっていない無責任な思い付きで、現場はひたすら混乱したという。藤田時代の古き良き日本マクドナルドは、この時期に壊れてしまったのかもしれない。●FCオーナーたちの怒り爆発
日本マクドナルドは14年7月に発覚した期限切れ鶏肉問題に端を発し、異物混入問題が相次ぎFC店は売上高を激減させた。カサノバ氏はロイヤルティーの一律減額に踏み切るなど、FC支援対策として30億円を投入した。しかし、日本マクドナルドは14年12月期決算で最終損益が218億円の赤字に陥るほど、業績が悪化した。これより先、日本マクドナルドはFCオーナーたちを集め14年秋以降の売り上げ目標を提出させ、署名させた。これにはFCオーナーたちが怒りを爆発させた。
その中の一人である原島清司氏は、日本マクドナルドの社員時代を入れると30年以上店舗運営にかかわってきた。FCオーナーとして独立してからは、西多摩地区を中心に34店舗を展開する大物オーナーであった。FCオーナー会議に出席した原島氏は、壇上に居並ぶ経営幹部を見て、こう嘆いた。
「かつての藤田社長時代と比べると、販売の現場で働いたことがない人ばかりが経営幹部だ。マックはすっかり変わってしまった……」
原島氏は、販売現場で働いたことのない人たちが経営幹部であることに違和感を持った。それは原島氏が知る日本マクドナルドではなく、異質の日本マクドナルドであった。原島氏は藤田時代の終焉を知り、FC34店舗の本社への売却を決めたのである。これは米本社主導で進める日本マクドナルドの脱・藤田路線にとって、ショッキングな出来事であった。対応を間違えればFCオーナーの集団離反にも発展しかねない、深刻な問題であったからだ。
日本マクドナルドは、引き続き20億円規模のFC支援を決めた。FC店の平均月商は一説には1200~1300万円といわれているが、売り上げの激減で、月間売上高の計20%を占めるロイヤルティー、家賃などを払うと、やっていけないところが増えているといわれる。そこで日本マクドナルドではロイヤルティーの引き下げ、食材費の支払い3カ月先送りなどの対策を取ったうえで、「ランチ時間帯の午前11時~午後2時の売上高を取り戻す!」作戦を進めている。売上高伸び率(前月比)に応じて10段階に分け、0.3~2.3ポイント減額する。15年1月~6月末まで実施する計画だ。
日本マクドナルドは今年1月、売上高が前年対比で38.6%も落ち込んだ。年間売上高予想などは先送りしているが、2~3月でも売り上げが回復しないと、FCの集団離反問題が再燃する可能性がありそうだ。
カサノバ氏はマレーシアでチキンの商品戦略を大成功させ、ケンタッキーフライドチキンを緊張させたという武勇伝の持ち主である。カサノバ氏自身、「当社のビジネスはFCと共にある」と、FC支援を惜しまない考えだ。これまでの内部蓄積も大きく、きっかけをつかめば再浮上する可能性は高いが、マーケティング屋のカサノバ氏が、この非常時を乗り切っていけるのかどうか、残された時間は少ない。●米本社でもトップ交代
米マクドナルド本社は3月1日付で現CEOのドン・トンプソン氏が就任2年半で引責辞任し、スティーブ・イースターブルック・シニア上級副社長がCEOに昇格する人事を決めた。最大の課題は、客離れの進むアメリカ事業の立て直しである。新CEOはオーダーメード型バーガーを全米2000店で展開する再建事業に取り組んできた。店舗で「あなたのバーガーをつくろう」と書かれたタッチパネルを操作し、好きな具材を組み合わせ、「自分だけのバーガー」を作って食べられるという、従来のマクドナルドでは考えられない店舗づくりだ。「食の安全」問題でも自社サイト上で工場内を公開し、食の不安を払しょくする取り組みも行っている。
現在、マクドナルドは日米欧中など世界で客離れを起こし、売上高を落としている。これはマクドナルドのこれまでの大量生産、大量販売の経営モデルが行き詰まっているからだ。アメリカでは14年夏からオーダーメード型バーガー店を試験的に始めた。価格は従来より高くなるが、これが結構人気で、マクドナルド再建の切り札になりつつある。
日本マクドナルドも米マクドナルドにならい、早晩オーダーメード型バーガーの新型店をオープンし、負の連鎖で行き詰まっている現状を突破しようとするだろう。
日本マクドナルドは創業社長の藤田氏の偲ぶ会を開催、藤田氏に礼儀を尽くしたうえで、再出発すべきである。
(文=中村芳平/外食ジャーナリスト)
株取引で大量の買いや売りを入れて意図的に相場を操作し、多額の利益を得る集団のことを「仕手集団」「仕手筋」などと呼ぶ。そんな有名仕手系グループ「般若の会」に調査のメスが入った。証券取引等監視委員会は3月11日、同会が運営するサイトを通じて特定銘柄の株価をつり上げた証券取引法違反(風説の流布)の疑いがあるとして、関係先を強制調査した。
般若の会元代表の加藤あきら(編注:日の下に高、以下同)氏は、1970年代後半から80年代前半にかけて医師や社長、政治家など5000人を会員とする投資家集団「誠備グループ」を率い、「兜町の風雲児」と呼ばれた相場師だ。日本中を騒然とさせた東京・銀座での1億円拾得事件(80年)のカネは、加藤氏が落としたものだ。「政治家に渡すカネだった」と後年述懐している。
81年2月、加藤氏は東京地検特捜部に逮捕された。所得税法違反(脱税共犯)の容疑だが、特捜部の狙いは加藤氏の顧客である政治家の名前を吐かせることにあった。加藤氏は取り調べ中に般若心経を唱え、完全黙秘を貫いた。加藤氏が口を割っていたら、リクルート事件(88年)と並ぶような一大疑獄事件になっていたといわれている。
加藤氏に助け船を出したのは、「経済ヤクザ」の異名を持つ石井進・稲川会会長(当時)だった。「秘密は厳守する」というプロ相場師の侠気に心を動かされた石井氏は、加藤氏側の証人に立った。顧客の脱税幇助では有罪になったが、脱税したという点では無罪になった。石井証言が決め手となり、検察が負けた。
バブル真っただ中の89年には、石井氏の指南役として「バブル期最後の戦い」といわれた王子製紙をめぐる仕手戦を仕掛けたが、石井氏の病死で仕手人脈は崩壊した。加藤氏はバブル崩壊後、影を潜めていたが、阪神大震災後の95年に「新しい風の会」を結成し、当時の仕手銘柄、兼松日産農林を300円台後半から5310円へと13倍強に暴騰させた。03年には株式研究会「泰山」を立ち上げ、証券界への本格復帰がささやかれた。加藤氏の介入が噂される銘柄は「K銘柄」といわれたが、加藤氏の名前が前面に出ることはなかった。
●推奨銘柄が暴騰
11年3月、東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生した。戦時中に広島で被爆した経験を持つ加藤氏は、座禅を組み般若心経を唱えた。そして加藤氏は般若の会を立ち上げ、般若心経を説くために実名で登場。併せて株価の見通しを披歴した。
11年11月1日にはサイト「時々の鐘の音」を開設し、「般若の会代表、加藤あきら」名で、「200円台、5円復配、復興関連」といったヒントを並べて「凄まじい爆発力を生み出す(銘柄)」と大予言した。市場でこれらの条件を満たす銘柄と目されたのは、大証1部に上場している化学メーカー、新日本理化だった。加藤氏の推奨を受け、新日本理化の株価は暴騰する。同年10月末に274円だった株価は、12月12日には930円の最高値をつけた。サイト開設から1カ月余りで3.4倍に上昇した。あまりにも強い動きに、12月9日には新規売り停止の株価規制措置が取られた。それに伴い、新規売りの流入がなくなるため、売り方の買い戻しが一巡すれば相場は一段落するのがセオリーだった。 しかし、そうした経験則は通じなかった。11年12月29日、加藤氏はさらなる株価上昇を予想した。
「12月12日の高値930円までは大量の出来高をこなし順調に買いの回転が効いていましたが、株価がさすがに4倍以上にもなると、利食い玉(ぎょく)の売りによって値動きが重くなってきます。しかし、その利食い玉も既に相当消化されており、今後一日平均で200万株の出来高と想定した場合、立会い日数にして15日間、来年の1月24日以降には上値が軽くなって意外と簡単に930円の高値を抜いてくることも十分考えられます。大阪証券金融での400万株の空売り残に加えて、来年3月には250万株以上の『隠れた空売り』の期日が到来します。この株式(新日本理化)のヤマ場は既に述べた通り来年の3月であると考えるのが妥当であると思います」
この加藤氏の予想を受け、12年に入り株価は暴騰。3月2日には1297円の最高値を更新した。サイト開設から4カ月で、実に4.7倍にまで上昇した。
今回の強制調査に当たり、証券取引等監視委員会は「新日本理化についての書き込みは、株価をつり上げるために行われた」として、金融商品取引法に違反する風説の流布の疑いに当たるとみている。
●外れた予測
「時々の鐘の音」は13年7月8日に更新が途絶えた。最後の書き込みでは、「般若の会代表 加藤あきら」名で、とてつもない値段を付ける出世株が取り上げられている。
「400円で700万株近くのカラ売りを抱え込んだ日本〇〇〇〇〇工業(株)の株価はいつ爆発するのか括目してやみません。カラ売りの積み上げ相場に発展すると300円の株価が5000円台まで成長した兼松日産農林のような大相場になる可能性があります。(中略)直近、7月4日の引け値は、709円でした。785円の高値が、適正なる日柄調整を経て、いつ抜かれるのか。カラ売りの積み上げ相場に発展するのかどうか。兼松日産農林の時の600円台の動きに酷似しているだけに、注目が怠れません」
「日本〇〇〇〇〇工業」とは、東証1部に上場している三菱系化学肥料会社、日本カーバイト工業のことだ。だが、「兼松日産農林のような大相場になる」との加藤氏の見立ては外れた。7月8日に794円の最高値をつけただけだった。日本カーバイト工業の予測が外れたためかどうかは定かではないが、サイトは閉鎖され、以後、加藤氏が表舞台に登場することはなかったが、今回の調査で表舞台に引きずり出された。
証券会社関係者は「般若の会がアウトなら、ネットの掲示板や個人のブログは軒並み取り締まらなければいけなくなる」と指摘する。強制調査が明るみに出てから、いくつかの類似サイトが閉鎖された模様だが、一罰百戒の効果は確かにあったといえよう。
完全に煽りを食らう格好になった新日本理化の株価は3月12日、一時前日比20円安の232円まで下げ、東証1部の値下がり率トップとなった。翌13日も3円安の233円で終わった。12日、13日とも日経平均株価は暴騰しており、新日本理化の不振ぶりが目立った。
(文=編集部)
福島第一原発の事故収束も一向に進まず、IS人質事件の余波でテロの危険性も高まっている。そんななかで日本は原発再稼働・輸出に邁進。日本の原発は本当に安全なのだろうか?
◆警察は対応能力なし、自衛隊は準備なし。日本はテロの狙い目!?
「イスラム国」(IS)人質事件後、最も危険性が高まっていると思われるのが「原発テロ」だ。ところが、「これから日本にとって悪夢が始まる」「すべての日本国民が今やイスラム戦闘員らの標的になった」と宣言されてもなお、日本政府は原発テロ対策強化を言い出そうとはしない。
元陸上自衛隊幕僚長の冨澤暉氏は「テロリストが狙うとすれば、いちばん効果的なのは原発。日本の原発は、他国よりもずっと対策が遅れているのです。原発テロゲリラ対策を早急にしなければ、日本は福島第一原発事故以上の被害を招く」と警告する。
「日本には原発テロを防ぐ態勢が整っていません。(『イスラム国』だけでなく)孤立化を深める北朝鮮が暴発するリスクも高まっています。細川政権時代、北朝鮮とアメリカが戦争寸前の状態になった際、当時の石原信雄・官房副長官が各省の役人に有事対応を考えるように指示しました。これを受けて警察庁の警備局長が私に意見交換を求めてきました。『大変な問題がある。北陸の原発がテロゲリラに襲われたとき、我々にはどうしようもありません』と切り出し、『機関銃やロケット弾を持ってくるテロゲリラに対応しようとしても、全国のスナイパーは50~100人ぐらい。しかも十数人の集団が襲ってくることは想定していない。そのとき自衛隊は、出てくれますよね』と聞いてきたのです」
冨澤氏は「そのときは(戦争状態となる)防衛出動が出ているのですか」と質問、警備局長からは「防衛出動ではなく、治安行動でしょう」という回答が返ってきた。それを受けて「治安行動はできません。何十年間、治安行動の訓練はしていない」と要請を断った。ここに日本の原発テロ対策の重大な欠陥があるという。実は’70年以降、自衛隊は治安行動の訓練をやめてしまっていたのだ。
「原発テロ対策は一義的には警察の役割で、自衛隊のほうはやりたくてもそういう役割が一義的にない。自衛隊は『警察予備隊』から始まりましたが、テロゲリラ対策では警察の予備にしかすぎない。警察がお手上げになって自衛隊が出て行っても、人を殺さずに相手を逮捕するのが『治安行動』の基本。自衛隊はそんな訓練は’70年からしていませんし、そんな生ぬるいことで対策はできません。テロゲリラにとっては、日本の原発は非常に狙いやすい脆弱な状態にあると言ってよいでしょう」(冨澤氏)
【冨澤暉氏】
’38年生まれ。元陸上幕僚長。「日本の原発でテロが起こる危険性」とその対策の脆弱さを以前から指摘し、原発テロ対策が日本の安全保障の緊急課題であると訴えている
取材・文・撮影/横田一
― 「イスラム国」事件で[原発テロ]が起こる!【1】 ―
福島を取材で訪れた主人公が鼻血を出す描写が大バッシングを受けた『美味(おい)しんぼ』鼻血問題。
【写真】雁屋氏が描いた「福島の真実」
騒動から10ヵ月がたった先月、原作者の雁屋哲氏が沈黙を破り、ついに反論本『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』(遊幻舎)を刊行。鼻血は決して風評ではないとする著者に、じっくりと話を聞いた。(第1回→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/13/44879/)、(第2回→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/19/45279/)
PART3では、鼻血騒動に対する福島県民からの意外な反応について、そして福島へのメッセージをお送りする―。
***
―ところで、鼻血騒動の時、雁屋さんの元に届いた意見には批判の声が多かったのでしょうか。
雁屋 あの騒ぎの時、2、3週間で900通近いメールをもらいました。そのうちの95%は僕に対する応援でした。(雁屋氏に)同感という意見や、福島県民からは「私たちが言えないことを言ってくれてありがたい」という声。福島に住んでる人たちが何か言うと、変わり者と言われちゃう。だから、本当のことをはっきり言ってくれて嬉しかったという意見が多くありました。
―そもそも『美味しんぼ』で、なぜ福島のことを描いたのですか。
雁屋 震災後最初に青森、岩手、宮城を訪ねて「被災地編」を書きました。そうすると取材で行く先々で「俺たちは一生懸命やろうと思うんだよ。でも、福島第一原発があれじゃ、いつ何が起こるかわからなくて力が抜けるんだよ」っていう声を聞くんです。最初は僕もなんとか福島に復興してもらいたいと思ってた。それで予定どおり福島編をやろうとなったのです。
―私も「福島の真実編」(110巻、111巻)を読みましたが、雁屋さんが福島のことを一番に思って描いているのがよくわかりました。だからこそ、鼻血のコマの部分だけ炎上してバッシングされたというのがわからない。批判する人は、全部を読んでないとしか思えないですね。
雁屋 僕は福島がすごく好きでね。本当は福島応援団のつもりで行ったんです。だから最初は内部被曝に対する考えも甘かったんです。だが、調べていくと原発事故以後の食べ物は相当に汚染されていることがわかった。例えば、セシウムが25ベクレル含まれた食べ物を一日100g食べたとすると、それだけで事故前より147倍も多く摂取することになる(注・日本分析センターが2008年に調査した日常食に含まれるセシウム137の福島市の結果から推定)。
でも、国が食品の基準値を100ベクレル以下と決めたことで、みんなが食品は100ベクレル以下ならいいと思ってしまった。それに食べ物の放射線量も問題だけど、そこで農作業している人たちの被曝はもっと深刻です。
―どういうことですか?
雁屋 土壌に放射性物質がすごく含まれてるでしょう。農作業をしていて土壌を耕すとそれが舞い上がる。田んぼの周りにいるだけで風が吹けば吸ってしまう。だから 食品の線量が低くなってもやっぱりダメだという結論に達したわけです。福島県庁だって僕が行った時には毎時0.5μSvあった。避難指定にすべきですよ。土地の汚染はいくら除染したって取り切れませんから。
―住民の中には被曝は怖いけど、いろんな事情で避難しない人もいます。どうしたらよいでしょうか。
雁屋 本当はここに住みたくないと声を上げることです。かなりの人が声を上げたら、日本人はみんな絶対に反応して応援します。外からなんとかしろと言ってもダメなんです。ある県民が福島の人は従順でおとなしいと言っていましたが、自分の命がかかっているのだから反抗すべきです。
僕がこういうこと言うと福島差別だって言う人がいるけど、それは逆。福島を差別している人だから「年間20mSvでも住め」なんて平気で言えるんだ。もし福島県の人たちを自分と同じ人間だと思ったら、「福島以外に住む僕たちは年間1mSvなのに、なぜあの人たちは20mSvで平気なんだ」と疑問を持って言うべきでしょう。
―雁屋さんに対し、政治家たちはこぞって根拠のない風評だと言いました。それに対してはどう思いますか。
雁屋 風評とは、噂やデマなど事実に即してないことを言いふらすことです。僕が言ってることは自分が体験した事実。それを風評というのは到底受け入れられない。風評と言う人は僕の言ったことのどこが風評かその根拠を示してほしい。誰のどの論文を根拠として、低線量や内部被曝では何も症状は出ないと言い切れるのか。そうしないと議論にならない。
―今、意見が違うと対話もできない風潮になっています。
雁屋 意見が食い違うだけでなく、福島の真実を語ると社会の裏切り者みたいな空気がある。みんなの和を乱すようなことするなって。とにかく僕はきちんともう一度議論したい。みんながいろんな意見を言う。それをしないで縮こまっちゃって、特に福島では放射能のことを何か言うと「おかしい」って言われる。
でも自分たちの命がかかってることなんです。福島の人たちには声を上げてもらいたいし、福島から逃げる勇気を持ってほしいと思います。
***
原発事故から4年が経過し、福島の復興に水を差す恐れがあるテーマは、議論することさえはばかられる風潮が強まっている。だが被曝問題は住民の健康に関わる重要なテーマ。すべてを風評のひと言で片づけず、きちんと議論や検証をしようという雁屋氏の意見は正論だ。
中には渦中に沈黙していたのに、何を今さらとの声もある。だが当時、首相までもが一マンガを批判する異常な事態下で、冷静な議論ができたのかは疑問だ。
■雁屋 哲(かりや・てつ)
1941年、中国・北京生まれ。東京大学教養学部基礎科学科で量子力学を専攻。電通勤務を経てマンガ原作者になり、1983年より『美味しんぼ』(画・花咲アキラ氏)を連載
(取材・文・撮影/桐島 瞬)
健康食品業界で優勝劣敗が進むかもしれない「機能性表示食品制度」が今年4月から始まる。新制度では「目の健康を維持します」など身体の部位を示し、製品や成分の働きを表示できることが特徴。これまでも効果を謳える特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品があったので、第三の制度となる。トクホと大きく違うのは、国の審査・許可ではなく「届出」で効果を表示できる点だ。さらに、新制度では健康食品やサプリメントだけではなく、果物など農産物にも効果が表示できるようになる。
新制度では効果の科学的根拠や製品の安全性の確保については、メーカーや販売者が自己責任で対応しなければならない。このため、担当の消費者庁は虚偽の表示や品質トラブルがあれば罰則を科す方針だ。
安倍晋三政権は2013年6月、健康食品などの表示規制の緩和を実施することを閣議決定したが、当初は「トクホ利権」を維持したい一部業者が自民党の厚労族と組んで、新制度の導入を阻止する動きもあったし、消費者庁もあまりやる気がなかった。ところが、市場拡大を期待する健康食品やサプリメントの業界団体が押し返し、新制度の導入にまでこぎ着けた。
政府が規制緩和を狙う背景には、財務省が目論む医療費の削減があった。年間1兆円ずつ増大していく医療費を抑制するためにも、病気になって薬に頼るのではなく「自分の健康は自分で守る」風習を日本にも根付かせようと考えたからだ。
ただし、規制緩和には一長一短がある。まず、消費者にとってのメリットは、健康への効果が表示されることによって、スーパーやドラッグストアなどの売り場で、自分の悩みや体質にあった商品を選びやすいようになることだ。
例えばDHAが含有されるサプリメントには「血管の健康を維持する」といった表示が検討されている。また、ミカン栽培が盛んな静岡県の「JAみっかび」では、ミカンに含まれる「β―クリプトキサンチン」に骨粗しょう症への効果があることから「骨の健康を保つ」という表示の検討に入っている。
健康食品やサプリメントには「効果がある/なし」の論争も存在しているが、行政の中では健康管理に「葉酸」摂取を推奨しているところもある。埼玉県坂戸市では「葉酸」を摂取する食事指導を行った結果、医療介護費を06年度と07年度で計22億円削減した実例もあり、科学的根拠のある機能性食品の摂取は、病気の予防に一定の効果があることも示されている。●「バスに乗り遅れると取り返しがつかない」
一方、想定されるデメリットは、新制度の枠内でも一部の悪徳業者が跋扈することだ。効果がないものを効果があるように表示したり、過大広告を出したりしている業者も多い。悪徳業者が嘘の表示をしたり、安全性に疑問の残るものまで効果を謳って販売推進したりした場合、被害を受けるのは消費者であり、場合によっては生命の問題にもかかわる。
こうした事態を想定して、消費者庁は商品取締りの担当者を増やすほか、健康への効果について否定的な研究論文があれば、それも探すように事業者に求めた。さらに、消費者庁は、今回新たに始まる「機能性表示食品制度」以外の健康食品を厳しく取り締まる方針だ。それを受けて、特にサプリメントの業界では、新制度以外の製品は「科学的根拠がない」「安全性が疑問」として淘汰される可能性も高いと見られている。「市場環境を激変させるパラダイムシフトであり、まさに市場革命だ。バスに乗り遅れると取り返しがつかない」と、ある大手事業者は話す。
●消費者庁がガイドライン公表
消費者庁は3月2日、制度の細則を定めるガイドラインを公表した。新制度は、科学的根拠や安全性などの面でハードルが非常に高く、研究開発と品質管理の両方で投資をして人材育成に取り組まないと、市場の変化についていけなくなる可能性も高い。制度の内容を熟知して活用しないと、スタート早々にトラブルが起こる可能性もある。
このため、大手事業者が集まる日本通信販売協会(JADMA)でも危機感を募らせており、3月24日にはJADMA主催でTOC有明コンベンションホールにて、消費者庁担当者を招聘してのガイドラインの徹底解説や業界大手の準備状況などを紹介するイベント「機能性表示食品制度前夜祭」が開催される。
健康食品に関わる健康被害への対応について、サプリメントと医薬品の飲み合わせなどについて講演があるほか、20年近く前に規制緩和して健康食品市場が拡大した米国での問題点とその克服についても、専門家が事例を紹介しながら説明する。さらに新制度に対応して新たに導入する自主規制なども発表する予定だ。JADMAでは、会員以外にも広く参加も受け付け、新制度の理解を進めて業界全体の底上げを図る考えだ。
(文=井上久男/ジャーナリスト)