社会そのほか速
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オーストラリアGPの予選走行中、最下位となった新生マクラーレン・ホンダ。これまでは条件の異なるテストで純粋な速さがはっきりと見えなかったが、最下位という結果で現在のパフォーマンス、そしてポジションが明確になった。
予選の結果を振り返ると、マクラーレン・ホンダのジェンソン・バトンのタイムは1分31秒422(17位)で、同じQ1セッションでトップのルイス・ハミルトンの1分28秒586とは2.9秒差。予選の最高速はトップのバルテリ・ボッタスの329.0km/hに比べ、バトンは312.8km/hで16.2km/h遅れていることが明らかになった。ただ、今回のウイリアムズは直線が特に速く、他のトップチームとの差は4~5km/hと、もう少し差は小さくなる。
ただ、たとえばマクラーレン・ホンダに次いで最高速が出ていないトロロッソ・ルノーでは、カルロル・サインツJr.が315.9km/hで、バトンと3.1km/hしか差がない。それでもサインツJr.はバトンと同じセッションで1分29秒597をマーク。バトンよりも1.9秒速いタイムで周回する。最高速で3.1km/hしか差がないのに、1周では1.9秒差。これはマクラーレン・ホンダのクルマがよほどダウンフォース不足なのか、それともトルク不足で最高速に達するまでに時間が掛かっているか、またはギヤレシオを間違っているなどの要因が考えられる。
実際、コースサイドで見ていても、T15などの低速コーナーでは明らかに立ち上がりのスピードが遅く、シフトアップのタイミングも他車に比べて遅い。コーナー立ち上がりのアクセルオンする直前のパーシャル区間で「ボン、ボン、ボン」というブリッピングに近い大きな音がするのも気になった。
予選セッション後のマクラーレンでの共同会見では、ホンダの新井康久F1総責任者がメデイアの質問に答えた。名門マクラーレン、そしてホンダという伝説の組み合わせの復活で湧く今年のマクラーレンだが、まさかの開幕戦予選最下位という結果にホスピタリティの雰囲気はいつになく重々しい。イギリス、そして日本のメディアだけでなく多くのメディアが会見に詰めかけ、質問のほとんどはドライバーよりも新井氏に集中した。
「バルセロナ(テスト)の結果からすると、もう少しできるかと思いましたけど、昨日と今日のコンディションの違い、それから、1レース目でエンジンを失うとシーズンを戦う(年間4基と規定で定められている)のが非常に厳しくなるので、かなりコンサバティブなセッティングをした結果、ドライバーの要求どおりに出力を出すことができずに、このような結果となりました」
現在のホンダのパワーユニットRA615Hは、全開でパワーを出すことができない状況だと新井氏は話す。
「熱の問題に起因するのですけど、それを避けるために確認していないところは使えないので、そこの部分を避けて使っていて、MGU-Kも100%、フルパワーでは使っていませんし、エンジン側も出力的には下げた状態で使わざるを得ませんでした。メカニカルでトラブルがあるわけではないですが、確認ができていないので使えていない、というのが正直なところです」
予選日は一時、路面温度が46℃にもなるほどの晴天に恵まれた。だが、この晴天も未経験のホンダ陣営にとっては、大きな痛手となった。予選開始でも路面温度は38℃。Q3の終了時には10℃下がっていたので、昼間の高い路面温度が熱害として、ホンダRA615Hのパフォーマンスの低下を強いることになった。
タイト&コンパクトがウリだったMP4-30のパッケージだが、結果的に冷却不足という諸刃の刃の餌食となる格好になってしまった。もちろん、ホンダ側としては、これもいわゆる想定外の問題だったのだろう。会見で新井氏が熱の問題を述べると、海外メディアからはすぐに鋭い質問が飛んだ。「次のマレーシアだと通常でも50℃を越えますが?」
新井氏は「今日のセッションでたくさん学びましたし、それはもちろん理解しています。パワーユニットのいくつかの部分はマレーシアの前にフィックスできます」と、その質問に応えるに留まった。明日のレースの展望については、「レースは厳しいです。エネルギーの使い方は分かっているのですが、そこにエネルギーを与えられないのが問題。(予選が)もっと涼しかったら、もっと前に行けたのになあというのはあります。明日のレース運びはマクラーレンは上手なので、我々もそことタイアップして、いいレースをしたいなと思っています。完走したいですし、ベストを尽くします」
決勝の結果はともかく、現時点での速さはこの予選で明らかになった。マクラーレン側も、最下位の事実にショックを受けているようだが、「もっと努力が必要」と話す新井氏が、この結果を一番、重く受け止めているに違いない。
[オートスポーツweb 2015年03月14日]