社会そのほか速
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東京都杉並区立神明中学3年の時、私は恋に落ちた。
活発で髪が短くて、かわいくて。私より背が高かった。全然、振り向いてもらえない。その頃の私は、勉強なんて全くしない、自堕落な生徒だったの。
それでも、彼女の気を引こうと真剣に考えた。女の子にモテるのはスポーツ万能か、ユーモアがあるか。私にはどちらも難しい。もう一つは、「才気走った不良」。それも、国語や社会ではなく、数学ができると、「頭がいい」と思ってくれるんじゃないかと。小学生の頃から、算数は勉強しないわりにできていたしね。
隠れて数学だけ勉強して、夏休みに初デートした。でも、ふられてしまった。お母さんに、「勉強のできない子と付き合っちゃダメ」と言われたんだそうだ。
それが私の心に火を付けたの。見返してやりたい。名門と言われる都立高校を目指して、心を改めてがんばった。でも、時すでに遅くて、合格できなかった。
実は、中学受験も失敗している。遊んでばかりの私を見かねた母親が、勉強させるために受けさせたんだ。怠けて、ちょっと奮起して、失敗して、また怠けて。だんだんその繰り返しが嫌になってきた。
で、自分は何がしたいかと考えた時に浮かんだのが、数学。人が気付いていない真理を、人と違った角度から眺めて見つけ出す。仕留めがいがあるんですよ、数学は。
ひとさまに迷惑をかけないように食いつなぎ、数学をやり続けようと。今も、貯金もなければ家庭もない。でも、数学と心中する気持ちでやってきて、それでよかったと思っているの。(聞き手・加藤理佐)
(2014年4月24日付読売新聞朝刊掲載)