上方落語界の大御所で人間国宝の桂米朝さんが１９日、８９歳で亡くなったことを受け、落語芸術協会の会長を務める桂歌丸（７８）が２０日、「落語界全体の損失」とのコメントをファクスで発表した。

　１９６６年に米朝さんのために書かれた落語「まめだ（豆狸）」を、長男の桂米團治（５６）を通じてもらっていたという歌丸は、数年前、米團治に「米朝師匠に稽古をつけてもらいたいけど大丈夫かな？」とたずねたことを明かした。

　この時、米團治から「もう無理でしょう」と返され、諦めたが、「『まめだ』を習いたかったですね」と心残りを明かし、落語界のあまりに大きな損失に、ショックを隠せない様子だった。

　【以下、歌丸の追悼コメント全文】

　私が前座、二ツ目の頃、大阪のえびす橋松竹に先代の桂小文治師匠のお供で伺った時、米朝師匠にはよく御馳走になりお世話になりました。それからは年に１回位しかお会いできなかったのですが、その時米朝師匠から「あなたは珍しい噺をお演りになりますね」と言われたことを今でもよく覚えています。

　数年前米團治さんに、「米朝師匠に稽古をつけてもらいたいけど大丈夫かな？」と聞いたことがあります。「もう無理でしょう」ということであきらめましたが『まめだ』を習いたかったですね。ほかにも米朝全集の中からこちらに持ってきたい噺が沢山あります。そうしたお話をできなかったことがなにより心残りです。

　米朝師匠の功績は上方落語を復興させただけでなく、関東はじめ全国に上方落語をわかりやすく広めたことだと思います。今日、米朝師匠の訃報を伺いまして、大阪、東京関係なく落語界全体の損失に思います。ただ、ご一門の方々が沢山おいでになりますので、米朝師匠の遺志を引き継いでいただけると思います。

　慎んでご冥福をお祈りいたします。

　　　　　　　　桂歌丸