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アカデミー賞監督、ミシェル・アザナヴィシウス氏が、映画『あの日の声を探して』の公開を記念して来日。3月19日に、ミシェル監督と小説家やタレントとして活躍する室井佑月によるトークイベントが行われた。オフ日には「中野ブロードウェイに行きます」という監督に、室井が「悪口じゃないけど、知的なオタクって感じ!」と口にするなど和やかな雰囲気で進む中、本作についての本質的な内容になると意見が白熱した。
映画『あの日の声を探して』は、現代の白黒無声映画『アーティスト』でアカデミー賞作品賞、監督賞ほか全5部門を受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督が、1946年にアカデミー賞4部門にノミネートされたフレッド・ジンネマン監督『山河遥かなり』から着想を得て製作した作品だ。
ストーリーは1999年、ロシアに侵攻されるチェチェン。両親を殺され、声を失った9歳の少年ハジ。一人放浪する彼はEU職員キャロルに拾われる。“彼が伝えたかったこととは? 生き別れた姉弟と再び会うことはできるのか―?”を描いたもの。主人公の9歳の少年・ハジを演じたのは、実際にチェチェンに暮らす素人の男の子で、監督は「彼自身も父親を亡くし、ハジと同じ悲しい経験をし、同様に心に暗闇を抱えている。しかし一方で、ハジと同様に成長していっているんだ」と明かす。
「こういう映画を観たかった!」という室井佑月は、「戦争映画でよくあるヒーローをたてて、戦争がかっこいいことのように描かれる作品に対して疑問を感じます。それに対しこの作品は、ただ悲惨な現状が映し出されるだけでなく、人間の強さというものが描かれていて、とても胸を打たれました」と絶賛した。「たとえ、非日常的なことが起こっても、人間には生きていく力があるのだというメッセージも感じられました」と語る彼女の言葉を受けて、監督は「仰る通り、私はこの作品で戦争を描きたかったのではなく、人間を描きたかったのです」と頷いた。
さらに監督は「人間には順応する力がある。特に子供はその力が強い。本作では、心に傷を負った9歳のハジが悲しみを乗り越え成長していく様子と強制的に兵士にならされた19歳の少年コーリャが、虐殺マシーンと化していく様子も描かれている。2人の順応するプロセスというものは表裏一体だが、立場が逆であれば同じ道を辿ることもある」と深い部分に触れている。
やがて、最近のイスラム国の日本人人質事件やチュニジアで起こった襲撃事件など、日本でももはやテロとの戦いが対岸の火事とはいえない問題となっている現状へと話題が向いた。…